エンジニア増員で赤字に転落…Webシステム開発会社、破産の顛末
Webシステム開発などを手がけていたエー・アンド・ビー・コンピュータが4月2日に東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。同社は2003年6月に設立。大手システム業者からの下請けを中心とした受注で、Webシステム開発などを手がけていた。
特に近年は人材採用と育成に注力し、高いマネジメント能力や質の高い実戦経験豊富なエンジニアを得意先に常駐させ、23年12月期には売り上げとして約11億1700万円を計上していた。
しかし、この間、採用強化によるエンジニアの増員に伴い人件費が増加したことで22年12月期は営業損益段階から赤字に転落。23年12月期も同様となり、同期には債務超過に転落した。
また、納付猶予を受けていた消費税および社会保険料において、24年に入り納付を求められたが、いずれも滞納状態となったことで、国税庁や日本年金機構から口座預金などの差し押さえ執行を受けるなど資金繰りが悪化。24年3月末には資金ショートする可能性が高くなっていた。
こうした状況を予測し、23年12月には準則型の私的整理手続きである「中小企業の事業再生等に関するガイドラインに基づく手続き(以下GL)」を開始。スポンサー選定を進めたものの、候補先と最終的に条件面で合わず、GLに基づく私的整理手続きを前提とした候補先との事業譲渡契約の締結を断念することとなった。
法的整理を前提とした事業譲渡契約に切り替え、再び候補先を探したところ、上場企業との間で、3月21日付で、事業譲渡契約を締結。4月1日付で同契約に基づき、同社の行っていた事業および従業員、取引関係などが上場企業の連結子会社に譲渡された。
こうして、会社という「ハコ」は破産により消滅したが、事業承継が行われたことで、より経営基盤が安定した企業グループの下で事業と雇用が守られる形となった。(帝国データバンク情報統括部)