いすゞ・日野自動車…「商用車」主戦場で苦戦、〝長い冬〟は終わるか
2024年の商用車業界は国内の底堅い需要があったものの、主戦場のタイ、インドネシアなどの市況悪化で苦戦を強いられた。いすゞ自動車、日野自動車の上場2社は24年4―9月期決算発表時、タイなどの台数減を主因に25年3月期の世界販売台数計画を引き下げた。23年から続く、これら地域の減速。一部では25年以降の回復も指摘される。“長い冬”の終わりを迎えられるかが焦点だ。
ピックアップトラック(LCV)「D―MAX」は、いすゞがタイでシェア首位を争う人気車種。足元では金融機関のローン審査基準の厳格化に伴い販売が低調だ。マークラインズによると1―10月のD―MAXのタイでの販売は、前年同期比48・1%減の5万9421台と大きく落ち込んだ。日野自も1―10月のタイの商用車販売が同55・5%減の3798台と半減した。
タイの市場悪化は家計債務の増加、政府の予算承認の遅れによる公共事業の停滞、9月と10月に発生した洪水被害に起因する消費者の車の買い控えといった複数の要因が連鎖。同国の経済成長を頼りに拡販してきた日本の商用車各社は厳しい局面を迎えている。
この傾向はいつまで続くのか。英調査会社のグローバルデータは「24年内は厳しい状況が続くものの、下振れリスクを伴いながらも25年には回復の兆しが期待される。金利の低下、繰り延べ需要、新車の投入が回復を後押しする可能性がある」と指摘する。
いすゞは11月、新開発のディーゼルエンジンを搭載したD―MAXをタイで発売した。トヨタ自動車が23年末に発売した新型「ハイラックスチャンプ」などもLCV需要の改善に寄与する可能性がある。
グローバルデータは25年のタイの新車販売台数を24年予想比15%増の63万7000台と予測。ただ、コロナ禍前の18年の約100万台の水準には及ばない。各社は正確な販売予測とライン稼働維持、費用低減などで難局を乗り切る耐性が求められている。