売り上げの半分が架空…「ヴィトン」「エルメス」扱った輸入卸が倒産、手を染めた粉飾の実態
グランブルーは2000年(平12)3月に設立された服飾雑貨の輸入卸業者。「ルイ・ヴィトン」を中心に、「エルメス」「シャネル」「プラダ」といった有名ブランドのバッグや財布、宝飾品を取り扱っていた。欧州の免税店から仕入れ、国内のセレクトショップやインターネット通販業者、同業者などに販売。19年9月期には年売上高約21億6300万円を計上していた。
しかし、コロナ禍での外出制限に加えて、百貨店や商業施設では時短営業や営業自粛が広がったことで個人消費が大きく低迷。また、渡航制限や物流の混乱で仕入れが困難な状況に陥っていた。さらに、急速な円安進行により輸入コストが上昇したことで収益性が低下した。
原価抑制に大量仕入れが必要で、この仕入れ代金は前払いとなるため資金繰りが悪化し、未取引金融機関に融資を打診するなど倒産直前まで資金繰りに奔走していた。
実は同社は6年ほど前から注目されていた。というのも、取引関係がある複数の同業者も連動して業容を拡大。企業ごとに得意なブランドがあるという理由で、販売と仕入れの両建て取引がある企業が多かった。その結果、在庫の所在と商流の裏付けが難しく、一部取引先では決算内容に疑義が生じ、同社においても資金調達に支障を来たし始めていたのである。また、業容拡大とともに必要運転資金が急増するなか、一部金融機関は借入金と取引金融機関数の増加に懸念を示していた。
決算書の上では、23年9月期の売上高は約26億2800万円を計上。しかし、同期を含む直近2期では売り上げを倍にする粉飾決算に手を染めていた。
2期以前の実態は把握できないものの、大幅減収で赤字の状態が続いていたと考えられる。業績改善を図るべく新事業にも取り組んでいたが、24年3月19日に事業継続を断念、8月28日に破産手続き開始決定を受けた。(帝国データバンク情報統括部)
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