UACJ・JX金属…非鉄大手が加速、工場DXのあの手・この手
非鉄大手各社がデジタル変革(DX)や自動化による工場の生産性向上を加速している。UACJはロボットを使った工程の自動化や搬送の自動化などを推進。JX金属は画像認識技術を使った検査工程の自動化などを進める。熟練技能者の経験に頼ってきた工程をDXで補い、人手不足などの課題の解決につなげる。(岡紗由美)
UACJ/大型自由鍛造で省人化狙う プレス後のシワをロボ研削
アルミニウムの押出製品を製造するUACJの小山製作所(栃木県小山市)は、溶解鋳造から押出、仕上げまでの設備を持つ。航空機や自動車、熱交換器などの材料を鋳造から一貫して製造できる点が強みだ。太田俊夫所長は工程の自動化について「3人で行っている押出ラインを、将来的に2人で効率的に運用できるように自動化設備の導入を検討している」という。金型などの搬送も自動化する計画だ。
同製作所では人工知能(AI)を活用した安全対策にも着手。工場内にAI搭載の安全カメラを設置し、設備内に作業者が侵入した際に検知してアラートを出したり、設備を止めたりするシステムの導入を進めている。
同社は鋳鍛製作所(同市)でも積極的に自動化を推し進める。同製作所は自由鍛造と呼ばれるアルミ鋳塊をプレスや治工具を使い、局部的に加圧などを繰り返してさまざまな形状に成形する方法で大型の鋳造品を製造。1万5000トンのプレス機を備え、歪みを抑えたロケットの大型リングなどの一品一様品で存在感を示す拠点だ。
高塚聖所長は「鋳造プレスは職人芸的な要素が多く、完全な自動化は難しい。技術伝承をどのように進めるかが課題」と明かす。その上で、プレス後の製品のシワを取り除くためにグラインダー(研削装置)で削る工程で6月末に新しいロボットを導入し、検証をスタート。プレス後に製品にシワが残ると複数回のプレスでシワが深くなり最終製品に影響するため、ロボットによる効率的な研削を目指す考えだ。
また、振動センサーを設置して稼働率のデータを収集し、問題点を見つけ出す取り組みを2023年度末に開始。工場が点在しているため、これまでフォークリフトで行っていた物品運搬に無人搬送車(AGV)による自動搬送を導入する検討も進めている。
アルミハニカムパネルや溶接構造物などを手がけるUACJ金属加工の郡山工場(福島県郡山市)でも、自動化の試みが進む。直近では、数年前から研究していたハニカムコアの切断を自動化。多田正弘取締役郡山工場長は「さらに効率的な生産体制構築のため、機械と機械の間のドッキングなどを進めたい」と意気込む。
自動化や省力化で生じた余力を生かし、航空宇宙・防衛材事業関連や自動車関連、熱製品関連などの新分野に力を入れていきたい考えだ。
JX金属/外観検査に画像認識活用
JX金属の各拠点でも、自動化の事例が相次いでいる。磯原工場(茨城県北茨城市)では、半導体用スパッタリングターゲットの製造工程で自動化に着手。検査工程で特殊な照明とカメラを使った外観検査システムの導入が進む。特徴は、さまざまな金属の検査に対応したことだ。単色の材料の自動検査機は普及しているが、金属は種類ごとに色が異なるため高い精度での傷の検出が難しかった。カメラ技術や解析技術が飛躍的に進歩したことで、実現可能な段階に到達したという。
同システムの導入により、出荷前に製品の外観を自動判定するだけでなく、顧客から問い合わせがあった際に画像を証拠として提案できるようになり、トレーサビリティー(履歴管理)の確保にもつながった。半導体用スパッタリングターゲットなど半導体材料の生産増強のため、建設中のひたちなか新工場(茨城県ひたちなか市)でも導入予定だ。
一方、スマートフォンのフレキシブル基板(FPC)向け圧延銅箔などを製造する同社倉見工場(神奈川県寒川町)の村岡慶一工場長は「工場長として課せられている課題は、当工場でのモノづくりを効率化すること」と認識。関連のプロジェクトを作って取り組みを進めている。
その一例が、デジタル化が進んでいない設備のデータ取得を可能にするための基盤整備だ。並行して、従来の改善活動にデジタル化を組み合わせた改善の質と速度の向上にも注力。インフラ整備とデジタル化施策の相乗効果を狙っていく。