M&A推進も中身伴わず、20社超傘下に収めた企業の破産劇
売却先の徹底した調査必要に
衣食住やエンタメなど日本国内の技術やサービスを海外に向けて発信しようと設立されたANEW Holdings。M&A(合併・買収)で急速にグループを拡大し、20社超を傘下にするも、2024年2月に破産手続き開始決定を受けた。
同社は17年に設立され、国内外の企業に対して新規事業の創出や資金面の支援などを通じたコンサルティングを行っていた。その後、迅速な事業展開を進めるべく、買収による子会社化を進め、グループ間の事業統合と既存事業のシナジーを図り、22年は月に1社、23年は10日に1社ほどのペースで買収を続けた。
しかし、その実態は中身を伴わないものだった。同社の代表が買収した企業の代表になったものの、連帯保証を変更することなく、傘下に入る前の元社長が実質的に経営を続けている企業は少なくなかった。さらに、同社から経営指導が行われることもなく、経理処理なども買収前のままで同社の代表と傘下企業の関係は悪化。それでも同社は買収を繰り返し、グループの拡大や資金不足のグループ会社への資金投入のため、経営指導料や借り入れなどさまざまな名目で1000万円以上の資金移動をグループ会社に行わせ、グループ全体の資金繰りが悪化し、破綻する結末となった。
同社が倒産したことで、20社を超える傘下の企業で連鎖倒産する可能性が高まったが、それぞれ傘下の企業は買収後も元社長が実質的に事業を運営していたことから、元々の社長を中心に株式が譲渡され、営業の継続意欲がある企業は存続した。一方で、債務超過や支払いができない、グループ会社の半数が同社と同様に破産する結果となった。
昨今は同社に限らず、買収した企業の資産を流出させ、経営破綻状態に陥れる企業が全国で散見される。売り手は徹底した売却先の調査を行わなければならないが、M&Aの仲介を行う業者や金融機関などは買い手の審査を厳しくしなければならないだろう。(帝国データバンク情報統括部)