「急拡大」DMS市場…三菱電機モビリティが豪社買収、存在感示す
三菱電機の自動車機器子会社である三菱電機モビリティ(東京都千代田区、加賀邦彦社長)は、運転手の脇見や居眠り運転などを検知する「ドライバーモニタリングシステム(DMS)」事業を強化している。このほど、豪州のソフトウエア企業に対して4000万ポンド(約78億円)を出資し、筆頭株主となった。同社のソフトウエアと三菱電機モビリティのハードウエアを融合して国際競争力のある製品を開発し、市場に売り込む。
居眠り運転などによる事故防止の観点でDMSは2026年から欧州で新車への搭載が義務化されるという。日米など自動車の主要市場でも規制化の動きが見られることから、今後市場は急速に拡大すると予想される。
三菱電機モビリティの東田篤武経営企画部長は「その動きに合わせ、完成車メーカーが高級車を中心に徐々にDMSの搭載を増やしている」と指摘。搭載車数は25年の世界新車販売のうち20%強を占める見通しで「35年には70%を超えてくるようなかなり急拡大する市場」とする。
今回資本業務提携した豪企業は00年設立のシーイングマシーンズで、三菱電機モビリティの出資比率は19・9%となる。DMS向けに、運転手の顔の向きや視線などを画像処理で高精度に検出するセンシング機能に強みを持つ。
三菱電機モビリティでは以前からDMS製品を販売しているが、シーイングマシーンズのソフトウエア技術を融合することで、よりセンシング精度の高い製品を開発していく。
また、シーイングマシーンズは「例えば欧州委員会の規制当局に対して、DMS関連の規制に関してアドバイザーの立ち位置で助言している」(東田経営企画部長)など、各国の規制当局に対してコンサルタント業務などもしている。資本業務提携によって、今後のDMSの規制の流れを押さえやすくなることも利点だ。
このほか三菱電機モビリティでは、脈拍などの生体検知技術による運転手の体調変化を迅速に検知して、事故の発生を防ぐ技術も開発している。これらの取り組みを通じ、DMS市場での存在感を増していく計画だ。
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