深海の貝から有害物質「PCB」検出、汚染広範囲の可能性
海洋研究開発機構の生田哲朗研究員らは、深海に暮らす非摂食性二枚貝から生物に有害なポリ塩化ビフェニル(PCB)などの残留性有機汚染物質を検出した。人間活動から離れた広い範囲まで汚染が広がっている可能性が示された。汚染状況や汚染ルートを把握することで今後の環境対策に役立てられる。
PCBやポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDE)は水に溶けにくく、最終的に深海に集まると考えられている。深海生態系は人為的な環境破壊の影響を受けやすいとされるが、深海生物の汚染分布情報は少なく、よく分かっていなかった。
研究グループは食物を摂取せずに深海で化学合成する細菌から栄養を得るため表層からの影響を受けにくいシロウリガイ類やシンカイヒバリガイ類に着目。人口の多い地点付近として相模湾の初島沖、人間活動から離れた地点として伊豆・小笠原海域の明神海丘を選び、これらの二枚貝を採取してPCBとPBDEの含有量を分析した。その結果、PBDEの検出はわずかだったが、PCBは全サンプルから検出された。
一方、10年ごとに採取された過去30年間のサンプルを分析すると、汚染量は2010年以降に減少していた。近年のPCBの規制が汚染低減に有効である可能性が示された。
日刊工業新聞2021年12月1日