産廃と有価物の曖昧な線引き、常に最新情報のチェックを!

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産廃を撤去後の土壌と水は有害物質で汚染された(大岡健三氏撮影)

瀬戸内海の豊島(てしま)(香川県土庄町)で起きた国内最悪の産業廃棄物の不法投棄事件は、住民と香川県との公害調停成立から今年で20年を迎えた。産廃撤去は終えたが、島は深い傷を負った。不法投棄は廃棄物を排出した企業にも責任が及ぶ。企業は知らないうちに事件当事者にならないためにも、廃棄物管理の徹底が求められる。

事件は地元業者が処分場建設を香川県に申請した1975年が発端とされる。住民は猛反対したが、県は78年に事業許可を出した。その後、大量の廃棄物が島に運ばれ、土壌や水の汚染、野焼きが原因となった住民の健康被害が発生した。

香川県は産廃の搬入を「合法」としていたが、90年に兵庫県警が業者を強制捜査した。93年、住民は産廃撤去を求めて国に公害調停を申請。00年6月に調停が成立し、03年から香川県による産廃90万トンの撤去が始まり、19年に完了した。

月刊誌『環境管理』の大岡健三編集長(産業環境管理協会技術参与)は豊島を何度も訪ね、取材を重ねてきた。「地元の方は勉強しており、産廃問題に詳しい」と印象深そうに語る。ただし、普通に生活していたら産廃問題と対峙(たいじ)する必要はなかった。75年に2000人を超えていた住民は800人台まで減った。「ゴミの島」という風評は消えず、「どうやって生計を立てていたのか」(大岡氏)と住民の苦労に思いを寄せる。

事件が起きなければ必要のなかった設備も多数ある。汚染水の処理施設は「ここまでの高度排水処理設備は他にもない」(同)という。ナンバーがないトラックも何台もあった。産廃撤去のために投入された車両だ。さらに隣の直島(香川県直島町)へ産廃を海上輸送する専用船も就航し、岸壁も整備された。

そして直島には焼却溶融処理場も建設された。有害物質で汚染された産廃など90万トンを無害化する施設だ。処理関連に総額800億円以上が投じられた。産廃の不法投棄は、解決まで長い時間と巨費を必要とする。環境省によると18年度末で2656件の産廃が放置されたままで、不法投棄は後を絶たない。

産廃・有価物、最新の法律確認を

豊島産廃不法投棄事件は、産業廃棄物と有価物の解釈の問題から始まった。事件を起こした業者は、解体業者から安い価格でシュレッダーダスト(廃製品を粉砕したくず)を引き取っていた。業者は金属片を回収して売却するからシュレッダーダストは資源(有価物)に当たるとし、産廃ではないと主張してきた。

現在でも産廃と有価物の線引きは課題として残る。大岡氏は「廃棄物管理は1件ごとに違う。前例が役立たない」と指摘する。分析機器が進化して日本産業規格(JIS)の検出法が更新されると、法規制の判断基準も変わる。有価物や土壌から有害物質が検出される可能性もある。

産廃処理をめぐる罰則は厳しい。「どの企業も潜在的なトラブルを抱えているという前提に立ち、常に最新の法律を理解しておく必要がある」(大岡氏)と忠告する。

日刊工業新聞2020年8月21日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

公害は自然だけでなく、人生も破壊するのだと取材をして実感しました。一人の生活だけでなく地域のコミュニティも壊し、支払う必要のなかった処理費も発生します。大量消費社会のツケ、都市のゴミの地方への押しつけなど、豊島問題は教訓が多く、機会があれば現地にも行きたいです。ちなみに小泉純一郎元首相は2004年に訪問しました。

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