微細プラスチックの海洋汚染問題、自主対策に乗り出す企業たち
「マイクロプラスチック」と呼ばれる微細なプラスチック片(微細プラ)による海洋汚染が問題化し、プラスチックの過剰な使用が見直されてきた。2020年7月にはプラ製レジ袋の配布が有料化された。微細プラは製品が漂流するうちに劣化し、波で砕かれてできると考えられているが、他にも発生源があることが分かってきた。人工芝や繊維くずの海洋流出に気付いた企業が、自主的に対策に乗り出した。
住友ゴム 人工芝、排水溝にフィルター
「海洋への流出を想定していなかった」。住友ゴム工業ハイブリッド事業本部の長谷川浩氏はこう語る。一般社団法人のピリカ(東京都渋谷区)が19年、全国の河川や港湾など100カ所を調査すると98地点で微細プラを確認した。その14%が人工芝由来だった。
サッカー場などへの人工芝の施工実績が豊富な住友ゴムも調査してみると、兵庫県西宮市の同社製人工芝が張られた施設周辺の護岸に緑の破片を発見した。人工芝と推定できた。激しい運動によってちぎれ、年4―5回の大雨によって排水溝から流出した可能性が高い。また、人工芝の下に詰める黒いゴムチップの流出も確認した。
西宮市が人工芝を全面改修した21年2月、住友ゴムは対策を講じた。グラウンド外側の人工芝を明るい緑色にした。黒いゴムチップがたまると濃い緑に変化するため、清掃するとゴムチップの流出を防げる。ちぎれた人工芝は雨水が集まる排水溝入り口に設置したメッシュで捕捉する。排水溝内にもフィルターを取り付けた二重、三重の対策によって現状、流出は確認されていない。長谷川氏は「楽しむはずのスポーツでの環境汚染を防ぎたい。情報を発信して啓発し、対策があることを伝えたい」と強調する。
アダストリア 繊維くず、洗濯ネットで分離
洋服の繊維くずによる海洋汚染も指摘されている。国際自然保護連合は世界の微細プラの原因の35%が繊維くずと報告している。アパレル大手のアダストリアは、洋服からはがれた繊維くずの流出を防ぐ洗濯ネットを開発した。二重構造となっており、上部のファスナーから洋服を入れて洗濯機にセットする。洗濯が終わると洋服と繊維くずが分離されており、繊維くずだけを取り出せる。繊維くずの80%の流出を抑制できるという。
同社の藤本朱美経営企画室アシスタントマネジャーは「多くの人が問題に気付き、早め早めに手を打ってほしい」と語る。将来、微細プラ汚染が深刻化すると取り返しがつかなくなる。海洋で分解される素材開発も進むが「普及まで時間がかかる。できることからやろう」と開発した。洋服をネットに入れ、繊維くずを除く作業は手間のようだが、生活者も海洋汚染防止に貢献していると実感できる。ネットは3種類あり、価格1540―2200円で発売した。
微細プラは魚介類の体内に蓄積されると生態系を乱し、人にも健康被害が出ると懸念されている。気付かないうちに自社の事業や製品が発生源となっている可能性もあり、点検すると問題が顕在化する前に対策を打てる。環境省も微細プラ対策の事例集を公表し、取り組みを呼びかけている。