解凍後も食感保てるクリーム…食品ロス削減へ化学メーカーの技術が面白い!

  • 0
  • 1
ADEKAは長期保存が可能なフローズンチルドデザート向けホイップクリームを発売(同クリームを使った菓子)

本来食べられるにも関わらず捨てられている「食品ロス」の削減が課題となっている。2019年に日本で開催された20カ国・地域(G20)新潟農業大臣宣言では、G20が食料の損失や廃棄の削減に主導的役割を担うべく努力する旨が盛り込まれた。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は「小売り・消費レベルにおける世界全体の1人当たりの食品の廃棄を半減」させる目標を掲げている。機能化学などの分野でも、食品ロスを削減する素材や技術の開発が進んでいる。(江上佑美子)

解凍後も食感保てるクリーム

【半減が目標】

農林水産省が4月に発表した17年度の食品ロス推計量は約612万トンだった。このうち一般家庭から発生する分を除く、食品メーカーや小売業など事業系の量は352万トン。ともに推計を始めた12年度以降で最少となった。ただ19年に発表された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針」では事業系食品ロスに関し、30年度までに00年比で半分となる273万トンに削減する目標を設定している。

食品ロスの削減に向け、食品メーカーは賞味期限の延長や年月表示の採用を進めている。菓子や飲料のメーカーが「賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する」といった納品期限を緩和する動きも出ている。こうした中、化学メーカーも素材開発などに知恵を絞っている。

ADEKAは「リスブランド」で、製パン・製菓業界向けに食用油脂やマーガリン、練り込み用クリームなどを展開している。20年度の新製品として、食品ロス削減に役立つ素材を開発した。

【高い冷凍耐性】

「アレンジホイップFC」はフローズンチルド用のホイップクリーム。ケーキなどホイップクリームを用いた製品は消費期限が短いのが課題だ。大量に作り必要な分だけ解凍できるフローズンチルドデザートは食品ロスを減らせる利点がある。一方で解凍後、食感や風味が落ちるといった課題があった。

ADEKAは乳化機能素材などの構造を工夫し、冷凍耐性が高いホイップクリームを開発。冷凍、解凍後もみずみずしく滑らかな食感を保てるようにした。

19年に純正クリーム向け製品を発売した。新製品のアレンジホイップFCは果汁やジャムなどとの混合用で、幅広い需要に応える。

機能性練込用マーガリン「マーベラス」は製造日から消費期限までを、従来比で1・5倍程度延長できると見込む。でんぷんの老化に作用する酵素や機能素材の組み合わせにより、焼きたてのパンのソフトさやしっとり感を保てるようにした。生地に油脂が分散しやすく、品質が安定する点も廃棄削減につながるとしている。

【ロス防止意識】

19年にファミリーマートがクリスマスケーキ販売を完全予約制にするなど、小売業界は在庫削減による食品ロス防止を強く意識するようになっている。業務用食品素材を提供するADEKAにとっては、売り上げに影響する動きでもある。「18年秋ごろからフードロス(削減)の影響が出ている。数量でいうと10%くらいではないか」(城詰秀尊社長)。

ADEKAは製造現場の労働力不足に対応し、「おいしさ」に加え、「冷蔵庫から出した直後の低温でも、生地に練り込みやすいマーガリン」など、作業効率向上に役立つ製品を開発してきた。これらに“食品ロス削減”という切り口も加え、アピールしている。

野菜・果物の鮮度 “冬眠”で長持ち

住友ベークライトは青果物鮮度保持包装の分野でトップシェアの「P―プラス」を展開している。P―プラスは防曇OPP(二軸延伸ポリプロピレン)などのフィルムにミクロサイズの穴加工を施し、酸素の透過量を調整することで、中に入れた野菜や果物を“冬眠状態”にし、長持ちさせる仕組みだ。

住友ベークライトは青果品を長持ちできる包装「P―プラス」を展開(左2本が「P―プラス」に入れたバナナ)

【呼吸を抑制】

青果物は収穫後も呼吸を続ける。呼吸で養分を消費、水分を発散することで、品質が低下してしまう。P―プラスは袋外からの酸素の取り入れと、二酸化炭素の排出の量を調整することで呼吸を抑制し、鮮度を保つ。

住友ベークライトは青果物の種類や量、流通条件に合わせ、穴の大きさや数を調整するノウハウを持つ。農業協同組合(JA)やカット野菜工場などに、P―プラスを提供している。

【防かび作用】

保存試験では、ネット包装では3日だった枝豆の保存期間を7日に、無包装では1日だったブロッコリーの保存期間を4日に延長することができた。青果物が放出する水分を袋外に排出し結露を抑えるフィルムや、防かび作用のある添加物を配合したフィルムなど、機能性を付加した製品も開発した。

家庭用に、野菜保存用のジッパー袋も販売している。新型コロナウイルス感染防止策として、スーパーマーケットなどで“買いだめ”をする消費者が増えている中、P―プラスの需要も高まっているという。

ガスバリアーで賞味期限延長

【でんぷん主成分】

クラレはでんぷんが主成分で生分解性のバリアー材「プランティック」を、食品包材として展開している。ガスバリアー性を持ち、食品の品質保持や賞味期限の延長に役立つ。パッケージ内に窒素などを入れ、化学保存料などに頼らず腐敗を防ぐ「マップ包装」にも適している。豪州や欧米のスーパーが包装材として採用。コーヒー豆パウチとしても使われている。

クラレは15年に、プランティックを製造販売する豪社を買収した。クラレはガスバリアー性を有する樹脂として、エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂「エバール」や透明フィルム「クラリスタ」を展開してきた。

食品を長持ちさせることによるロス低減に加え、バイオマス由来という新たなニーズにも応える素材として、プランティックを訴求している。

【ボリューム感】

エフピコは食品ロス削減に役立つ刺し身トレー「完全ツマなし商品」を20年の戦略製品の一つに位置付け、スーパーなどにアピールしている。スーパーや鮮魚店は刺し身をパッケージ販売する際、大根を細切りした「ツマ」を刺し身に添え、ボリューム感を出すとともに見た目を向上する工夫をしている。

エフピコは刺身のツマを使わずに、商品の見栄えを上げることができるトレーを提案

ただ刺し身を購入後にツマを廃棄する消費者は多く、食品ロスにつながっている。エフピコは底に膨らみを持たせるといった仕掛けで、ツマを使わなくてもボリューム感が出せるトレーを提案。華やかな柄で見栄えを上げるといった工夫もしている。 ツマを盛り付ける手間が省けるため、スーパーのバックヤード担当者らの負担軽減にもつながる。

【割れにくいふた】

二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)「OPET」を用いた、割れにくい透明のふたも提案する。OPETは非晶性ポリエチレンテレフタレート(A―PET)を縦横に引き延ばした、同社のオリジナル素材。耐寒性があるため、冷凍輸送中の容器破損による商品廃棄や消費者からのクレームを防げるとしている。

日刊工業新聞2020年5月1日

関連する記事はこちら

特集