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なぜ日本は男女間格差の解消が進まないのか、その理由と処方箋

なぜ日本は男女間格差の解消が進まないのか、その理由と処方箋

男女の賃金格差は勤続期間や教育訓練投資の差といった要因で生じるケースが多いという(イメージ)

新型コロナウイルスの感染拡大は、女性や非正規の雇用に打撃を与えた。宿泊・飲食やレジャーといった業種で多くの人が職を失ったほか、就労時間の激減で収入の大幅減に直面した。日本経済の弱くてもろい部分があらわになり、平時には見えにくい構造問題が浮き彫りになった。日本のジェンダー平等への取り組みの遅れが問題視される中、労働市場や働き方改革の課題とともに、その処方箋を探る。(幕井梅芳)

【雇用喪失、男性の倍】コロナで失業、深刻…

賃金格差に無意識の偏見…女性の活躍のためクリアすべき課題が多い(イメージ)

コロナ禍を受けて、2020年4月の就業者数は同3月比で、男性の37万人減に対し女性は70万人減と、女性の雇用喪失が約2倍に達した。失業者は宿泊・飲食やレジャーといったサービス業に集中。これは同分野に女性の非正規労働者が多いためだ。また、看護師や介護士といったエッセンシャルワーカーには多くの女性が従事し、非正規労働者も少なくない。男女間、正規・非正規間の格差が、諸外国と比べて大きい日本の構図が問われている。

なぜ、男女間の格差が縮まらないのか。第一生命経済研究所の的場康子主席研究員は、「女性は家庭・育児に専念するというアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が存在する」と指摘する。10年以降上昇を続けてきた女性の労働力率がコロナの影響で頭打ちになり、女性が労働市場から退出する動きが顕在化。学校の閉鎖や介護施設の一時閉所などで、子どもや高齢者のケア負担が増え、その多くを女性が背負い、就労を諦めたとみられる。人口減少と高齢化の急速な進行が予想される中、既婚女性の就労の足踏みは、労働力確保の観点で大きな損失だ。

賃金格差“世界で上位”/養育訓練・育児介護の支援 重要

日本の男女間の賃金格差も、諸外国と比べて大きい。経済協力開発機構(OECD)によると、フルタイム労働者における所得中央値で見たときの女性賃金の男性賃金に対する格差は、欧米諸国が5―15%程度だが、日本は2割を上回る。女性に低賃金・不安定な非正規雇用が多いうえ、正規・非正規の処遇格差が大きいためだ。

男女間格差の解消に向けて立教大学の首藤若菜教授は「管理職や幹部層に女性が就くことを強制的にやるべきだ」と指摘。「まずはクリティカルマス(分岐点)とされる3割が目標だろう」と続ける。意思決定の場に女性がいることで、組織の雰囲気が変わり新陳代謝も図られるという。

制度面でも育休取得を進めた企業を表彰するなど、普及のための仕掛けも必要だ。加えて、男女の賃金格差は勤続期間や教育訓練投資の差で生じるケースが多いことから、教育訓練投資の男女間の機会均等や出産・介護などライフイベント時の就業継続支援も欠かせない。

一方、企業も女性の活躍が進めば、採用活動のアピールポイントになることはもちろん、男性にない女性の感性を生かした新規事業の創出など、多くのメリットを期待できる。

日刊工業新聞 2022年2月15日記事を一部抜粋