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テレ朝・板倉アナ「心苦しさを感じてしまった」。男性育休を企業成長につなげるカギは?

テレ朝・板倉アナ「心苦しさを感じてしまった」。男性育休を企業成長につなげるカギは?

東京都が2月8日に開催した「ライフ・ワーク・バランスEXPO東京2022」のパネルディスカッションに登壇した5氏(左から、メルカリの小泉会長、TBSテレビの蓮見氏、テレビ朝日の板倉氏、フジテレビジョンの榎並氏、ワーク・ライフバランスの小室社長)

改正育児・介護休業法の段階的な施行に伴い、企業は4月以降、男性の育休取得への対応を迫られる。中小企業も例外ではない。誰が休んでも業務が滞ることのない仕組みづくりの重要性は、コロナ禍の事業継続計画(BCP)の観点からも再認識されつつあるが、経験者はどんな思いで取得に踏み切ったのか。また、職場風土改革を企業成長につなげるカギはどこにあるのか。東京都が働き方改革をテーマに開催したパネルディスカッションからヒントを探る。(編集委員・神崎明子)

局アナ「復帰後に不安・心苦しい」

育休取得の背景は人それぞれ。民放各局の顔として知られる男性アナウンサーも会社員であることに変わりなく、組織や自身のキャリアの中で思い悩んできた姿が垣間見える。

次男誕生に合わせ1カ月の育休を取得したテレビ朝日の板倉朋希さんは、当時6歳だった長男に寄り添いたいとの思いから。三男の誕生に合わせて3週間取得したTBSテレビの蓮見孝之さんも同様に「長男、次男のケア」が大きな理由。2021年夏に第1子が誕生、2週間の育休を取得したフジテレビジョンの榎並大二郎さんは上司から育休取得の意思を問われたことが背中を押したという。

法改正に伴い、4月以降、こうした取得の意向確認が企業に義務づけられる。

それぞれ看板番組を担当する彼らでも「復帰後に居場所はあるのか」の不安はつきまとったという。「秋の番組改編時と重なったこともあり、心苦しさを強く感じてしまった」(板倉さん)。「(育休が)もっと長かったら(処遇面の)不安はなかったとは言い切れない。人事査定のポイントなど社内規定が明文化されていたことが安心感につながった」(榎並さん)。

育休中のめまぐるしい日常や、子どもと向き合った実感など、各局アナのエピソードが披露された

小室氏「不当評価防止を」/メルカリ「支え合う文化醸成」

育休取得後の不利な処遇は法律で明確に禁じられている。一方で、年々積み上がる累積ポイントで昇進や昇格が左右される企業の場合、育休を取るたびに後れをとってしまうことが懸念される。こうした仕組みを見直す視点も欠かせない。

「『プライベートを充実させるような人間は昇進を望むべきではない』といった社会の風潮は、そもそも女性の活躍も阻んできた」。こう語るのは企業のコンサルティングを手がけるワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さん。育休を取得することで昇進や昇格を望まない、「評価を気にしない社員」と捉えられ、賞与などの面で上司から不当に評価されることがないよう組織としてチェックすることが肝要と指摘する。

「『育休取得の推進が業績向上に意味あるのか』とよく問われるが、答えは明快」。こう語るのは社長時代に第2子、第3子の誕生に合わせそれぞれ2カ月の育休を取得経験のあるメルカリ会長の小泉文明さん。率先垂範により、今や同社の男性育休取得率は9割超、平均取得期間は2カ月に上る。オンラインの活用を通じて業務が滞ることがなかった自身の経験も踏まえ「(生活のすべてが)育児だけでない育休もある」と指摘する。

実際、法改正に伴い10月からは、労使の合意があれば育休中でも一定の範囲でスポット的に働くことが可能になる。その人でなければ対応できない業務に対応できる余地を残すことで、休みづらいという心理的なハードルを下げる効果が期待される。

「さまざまな事情から、社員が思い切り働けない理由を取り除くことに力点を置いてきた」。メルカリがこれまで進めてきた制度づくりの力点について小泉さんはこう語る。「平等性はないかもしれない」(同)が、認可外保育園の利用補助や、病気やけがを理由に有給休暇とは別に利用できる休暇制度など多様な支援策を導入。仕事に取り組む意欲を引き出すとともに、時間的な制約を受ける社員があっても円滑に回る組織づくりに力を注いできた結果、「支え合うカルチャーを作り上げたことが大きい」。小泉さんの育休取得当時は20人ほどだった同社の従業員は今や1800人を数え、企業成長を遂げている。

人材の争奪戦は今後、ますます激化することが予想される。長期的な視点に立った企業の競争戦略の一つとして、男性育休を捉えたい。

日刊工業新聞2022年2月15日

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