未知の世界を解き明かす「海底地図」 ビジネス創出も視野

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海底探査レースイメージ(Xプライズ財団提供)
 月や火星への探査に注目が集まっている。だが人類は足元の地球にある広大な海を解き明かせていないのが現状だ。海中資源の採取技術の向上には海底探査による海底地図が必要。海洋研究開発機構や日本財団などをはじめ、世界中で海底探査のための地図作りに注目が集まる。海底地図ができれば資源探査に役立つ基盤技術となると期待される。(飯田真美子)

 「ミスひとつなくミッションをこなせたことが優勝につながった」。米Xプライズ財団が主催する国際的な海底探査競技「シェル・オーシャン・ディスカバリー・Xプライズ」に参加し、優勝した日本財団の海野光行常務理事はこう振り返り、笑顔を見せた。

 同競技は自律型海中ロボット(AUV)などの潜水機で水深4000メートルの広範囲な海底地図を正確に作ることがミッション。日本財団が参加する国際チームは無人システムを使い、出場チームの中で唯一、水深4000メートルを超えた海底地形を観測し、ミスなくミッションを終えた。

 この競技にはメーンスポンサーである米石油大手のシェルのある狙いがある。近年、浅い海域での石油は掘り尽くされ、石油業界はより深い海底での油田を探していた。だが「海底地形は地球上の総面積の15%しか分かっていない」(海野日本財団常務理事)。そのため、シェルは広範囲の海底地形の調査を必要としていた。レースという形で各機関が有する海中ロボットなどの技術開発を後押しし、培った探査技術から海底調査の高速化と低コスト化を図るのがシェルの思惑だ。

 一方、日本財団は海底地形図を作成できる専門家を育成し、2030年までに100%の海底地形図の完成を目指す国際プロジェクトを進めていた。日本財団はプロジェクトを通じて育成した専門家を従え、競技に参加して優勝。技術力に対する手応えをつかんだ。

 同じく日本からは海洋機構を中核とする海底探査チーム「チームクロシオ」が参加。水深4000メートルの潜行に対応できる2機のAUVを開発し競技に挑んだ。競技前にAUVの一つが故障したが、残る1機のAUVのみでレースに臨み準優勝を果たした。優勝は逃したが、海洋機構は競技で培ったAUVなどの技術を生かし、研究者や企業などを顧客とした海洋ビジネスの創出を狙う。

 チームクロシオの共同代表である中谷武志海洋機構技術研究員は「研究者や企業などの顧客に対し、特定地域の海底地図や海水温などのデータを即日提供する仕組みを構築したい」と語っている。

 海底地図が完成すれば資源探査や地震の発生、地球温暖化などへの活用が期待される。より手軽に地形情報を入手し、使いやすい形にすることが大切だ。未だ解明されていない海底地形を解き明かすことで、海底資源探査に活用され海洋の新たな知見につながると期待される。

日刊工業新聞2019年10月23日

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