コストかさむが…日本郵船の自動車船、LNG燃料に全面転換へ
日本郵船は今後、自社で新造する自動車専用船を全船、液化天然ガス(LNG)燃料船とする方針を明らかにした。大型のばら積み(ドライバルク)船もLNG燃料船を基本に検討していく。ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を前面に打ち出して、輸送時の環境負荷軽減を志向。重油燃料に比べて費用はかさむものの、荷主に環境配慮型物流を訴求して、LNG燃料船利用の理解を得ていく。
日刊工業新聞の取材に応じた日本郵船の長沢仁志社長は「化石燃料を使って運ばざるを得ない。けれどもノウハウを結集して地球環境に優しい輸送に努力したい」と話し、LNG燃料への全面転換に意欲を示した。省エネルギー船や自律航行、ビッグデータ(大量データ)を使う最適航路の選択など、技術力を総動員して航行時の二酸化炭素(CO2)排出量削減を目指す。
日本郵船は100隻を超える専用船を運航し、自動車の海上輸送で世界トップ。2019年3月期には340万台を輸送した。ノルウェーのグループ会社が16年に、世界初のLNG燃料で航行できる自動車専用船を投入したのを皮切りに、22年には国内と欧州でLNG燃料船5隻の稼働が決まっている。
国際海事機関(IMO)は20年1月から、船舶燃料油中の硫黄分濃度(SOX)規制を強化し、50年までに温室効果ガス(GHG)を08年比半減する目標を掲げる。LNG燃料船はSOXの排出がなく、現行の重油燃料船に比べて、CO2排出量を3割弱減らせるため、当面の代替燃料として最有力とされる。
国内では日本郵船と川崎汽船がともに20年秋、LNG燃料の自動車専用船を投入する計画。日本郵船は新来島どっく、川崎汽船は今治造船でそれぞれ建造中。商船三井も、LNG燃料フェリー2隻の22年投入を予定し、近く三菱造船で建造に着手する。
LNG燃料船の稼働に合わせ、世界各地で燃料供給拠点(バンカリング)形成が進む見通しだ。国内では20年に伊勢湾などでLNG燃料供給が始まる。