三菱重工の造船所売却、突き動かした“韓国LNG船"の猛威

受注で韓国が圧倒、再編モード熱帯びる

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長崎造船所香焼工場。LNG船受注を増やす計画だった

三菱重工業が香焼(こうやぎ)工場(長崎市)を、造船国内3位の大島造船所(長崎県西海市)に売却する方向で交渉を進めていることが明らかになった。同工場は2008年に国内最大級のゴライアスクレーンを稼働させ液化天然ガス(LNG)船受注に注力してきたが、安値受注攻勢を続ける韓国との競争を前に、先行きの見通しが立たないと判断したもようだ。造船業界は11月末に最大手の今治造船(愛媛県今治市)と2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU、横浜市西区)が提携を発表したばかり。再編の動きが一気に熱を帯びてきた。

香焼工場は吊り能力1200トンのゴライアスクレーンとともに、全長1000メートルの巨大ドックを備える。建造能力を高めて世界規模で需要増加が期待できるLNG船の受注を増やす計画だった。実際、LNG輸出国のカタールが今後10年で100隻規模の大量調達を決めたのをはじめ、モザンビークも16隻の新造船調達を計画するなどLNG船市場は活況を呈している。

ただ、ふたを開けてみると受注できたのは圧倒的に韓国勢。日本勢は蚊帳の外に置かれた。明暗を分けたのは価格競争力だ。世界最大手の現代重工業は、スケールメリットを生かし、年間10隻以上をまとめて建造。資材調達力と連続生産による習熟度向上を合わせて、コストを引き下げていくやり方だ。韓国政府もこの動きを全面的に後押し。「韓国勢に対抗するには現在より1―2割安い値段で注文を取らなければならない」―。造船各社の首脳は口をそろえる。

国内造船会社の中では、川崎重工業と三井E&S造船(東京都中央区)もLNG船受注を狙う方針を示しているが、主体は中国の合弁会社。中国は安価な人件費でコストが安い上、中国国内のLNG船需要だけでも事業が成り立つとの読みもある。無理して受注を取る考えはない。

今治造船と提携を決めたJMUも、協業分野からはLNG船を外している。17年度にLNG船建造に伴う損失で、694億円もの当期赤字を出した経緯があり、新規の受注には及び腰だ。国内5カ所の新造船事業所の建造手法やデータなどを統一し、コスト競争力を強化する考え。今後はこれに、今治造船のコスト削減ノウハウも加わる。

国内造船は今後、今治造船とJMU連合にさらに数社が加わるとの観測もある。ただ、単純に連合を組むだけでは、小規模の造船所が乱立する過剰状態は変わらない。「環境規制の強化で世界の新造船需要が数年後に再び上向く。それまでは我慢比べの状況が続く」(国内造船)との声もある。存亡を賭けた“チキンレース”は激しさを増している。

(取材・嶋田歩)

日刊工業新聞2019年12月16日

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