オリックス・宮内氏「変化を面白がれば、先頭を走っている」

【連載#8】ポスト平成の経営者 オリックス シニア・チェアマン 宮内義彦氏

 「オリックスが何の会社か知っていますか?」-。かつて自社のテレビコマーシャルでそう語るほど、オリックスの事業は多角的で、変化してきた。宮内義彦シニア・チェアマンに、今後の日本の変化への心構えを聞いた。

国民の自覚が既得権益を打ち破る


 -長年、経営の第一線に立ち、次々と事業を広げてきました。
 「常に新しい事をやらなければ、企業は存在しない。実りあるものは出ない。うまくいかなければ修正し、苦心しながら、面白そうなら頑張る。その連続だ。撤退は早く見極めてきたが、早過ぎたものもあるかもしれない」

 -人工知能(AI)やブロックチェーンなどの新技術が社会を変えようとする中、ルールも変化が必要です。
 「日本の産業政策は業界の立場に立ってきたが、今後は最終消費者の利便性で判断しなければ日本経済は持たない。例えば、米ウーバーなどが行うライドシェアサービスの禁止はおかしな話。金融機関が担ってきた決済機能も変わる。消費者の利益を中心に考え、産業政策全般を変えなければいけない。政治が業界の叫ぶ声ばかり聞いていたら、いつまでも古い規制が日本経済の展開と消費者の利便性を阻害する。既得権益を打ち破るには、国民の自覚も必要だ」

私が20代ならオリックスに入社しない


 -次世代の経営者に何を期待しますか。
 「社会の一番優秀な人たちが起業してほしい。今の日本に一番欠けていることだ。大企業の一員で終わるのは、どちらかというと止めてほしい。技術革新が急速に進み、今まで想像できなかった大きなビジネスが生まれるかもしれない。その中で成功も失敗もあるが、失敗しても人生おしまいじゃない。その気概があれば、別のことをできる」
 「私が今20代でとても優秀なら、オリックスに入社せず、自分で世界に挑戦したい。ただ、生半可な知識や実行力では挑戦できない。鍛えてくれる会社で2-3年働く」

 -自分で挑戦する人を日本に増やすには。
 「資金面では、日本にはベンチャーキャピタルが少なく、規模も欧米に比べて小さい。日本は資金余剰の国なのだから、起業家を資金でもっと応援する人が増えてほしい。一方、教育の面では、まず大学の入学試験を考えなければならない。多く覚えた人ではなく、多くを考えた人が優秀だという形にする必要があるのではないか」

オリックス宮内義彦シニア・チェアマン

収益追求だけの経営は時代遅れ


 -日本の生産性の低さは、今後も課題として残っています。
 「日本企業は基本的に社員をジェネラリストに育てるため、生産性が低い。海外ではスペシャリスト(プロ)が1人で仕事をするのに対し、日本はチームになって数で戦うセミプロの集団。プロ対セミプロでは猛烈な差がある。スペシャリストの育成が急務だ。転職して、産業界を“横移動”できるため、人材の流動化につながる。この変化は一部で自然と始まっている。一番変わらないのは人の意識。古い意識の人は年齢に関係なく、変化の抵抗勢力になる」

 -今、企業統治(コーポレート・ガバナンス)の問題が注目されています。以前は株主重視の立場でしたが、今の考えは。
 「株主を重視する欧米式のガバナンスは経営効率が高く、今までは間違ってはいなかった。だが、これからの日本で収益性だけを追求した経営は時代遅れとなる。昔の日本型経営とは違う。欧米式の効率性を取り入れた上で、広い社会性を追求する。経営者には総合的な判断力が求められる。経営者が高みを見れば見るほど、収益性だけではない高い評価を得られ、中長期で会社にプラスとなる」

世の中は面白い!


 -あらゆる事が変わるのですね。
 「物事は変化する。流転する。世の中は変わらないと思う人は、若くてもダメだ。動かなければ、置いていかれる。変化を面白いと思えば、先頭を走っていることもある。若い人には、社会に向かってプラスになることに挑戦してほしい」

 -保護主義の台頭や、米中の貿易摩擦など、今後のグローバル経済の変化をどう見ていますか。
 「世界経済を引っ張ったグローバリズムは、ひずみが強調されている。これはしばらく続くだろう。マクロ経済はとても読みにくくなった。しかし、複雑なマクロ経済の動きを見ながら、自社の成長は十二分にできる。マクロ経済や資本主義はどう変化するのか、私は世の中面白いと思って観察している。ある本に、かなり長期的に見れば世の中は良くなっているとあった。そう思っている」

オリックス宮内義彦シニア・チェアマン

連載「ポスト平成の経営者」


激動の平成を支えたベテラン経営者と、今後を担う若手経営者に「ポスト平成」への提言・挑戦を聞くインタビューシリーズ
(1)キッコーマン取締役名誉会長・茂木友三郎氏「世界の情勢に乗るな。自ら需要を創り出せ」
(2)キヤノン会長兼CEO・御手洗冨士夫氏「米国流に頼るな。グローバル経営に国民性を」
(3)テラドローン社長・徳重徹氏「『世界で勝つ』は設立趣意。不確実でも踏み込め」
(4)ユーグレナ社長・出雲充氏「追い風に頼るな。ミドリムシで世界を席巻」
(5)プリファードネットワークス社長・西川徹氏「誰もが自在にロボット動かす世界をつくる」
(6)元ソニー社長・出井伸之氏「これが平成の失敗から学ぶことの全てだ」
(7)日本生命保険名誉顧問・宇野郁夫氏「経営に『徳目』取り戻せ。これが危機退ける」
(8)オリックスシニア・チェアマン・宮内義彦氏「変化を面白がれば、先頭を走っている」
(9)東京電力ホールディングス会長・川村隆氏「日本のぬるま湯に甘えるな。今、変革せよ」
(10)JXTGホールディングス会長・渡文明氏、10兆円企業の礎を築いた合併・統治の極意
(11)ダイキン工業会長・井上礼之氏「二流の戦略と一流の実行力。やっぱり人は大事にせなあかん」
(12)昭和電工最高顧問・大橋光夫氏、初の抜本的な構造改革、個人の意識改革が最も重要だった
(13)パナソニック特別顧問・中村邦夫氏、次の100年へ。中興の祖が語る「改革」と守るべきもの
(14)住友商事名誉顧問・岡素之氏、終わりなき法令遵守の決意。トップは社員と対話を
(15)セブン&アイHD名誉顧問・鈴木敏文氏、流通王が語るリーダーに必須の力
(16)WHILL CEO・杉江理氏、電動車いすの会社じゃない!「WHILLが建築をやる可能性も」と語るワケ
(17)ispace CEO・袴田武史氏、宇宙ベンチャーの旗手が語る、宇宙業界を変える民間の力

日刊工業新聞2019年2月13日掲載より加筆

梶原 洵子

梶原 洵子
02月14日
この記事のファシリテーター

規制や日本の生産性、競争力の話では鋭い表情をされていましたが、多くのこと、特に変化すること全般について「面白い」と語る笑顔が印象的でした。その姿勢が、変化をプラスのものにする秘訣なのかもしれません。次回は東京電力ホールディングスの川村隆会長です。ご期待ください。

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