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JR東海が新幹線給電を省エネ化、周波数変換装置「静止型」の仕組み

JR東海が新幹線給電を省エネ化、周波数変換装置「静止型」の仕組み

静止型の周波数変換装置

JR東海は2037年度末までに、東海道新幹線への電気供給システムを構成する周波数変換装置(FC)を全て省エネルギー性能の高い「静止型」にする。約268億円を投じ、新たに横浜市港北区の2基のFCを回転型から切り替える。架線への鳥の接触などで発生する大電流やダイヤ乱れによる過負荷を防ぐ制御技術を開発し実現にこぎつけた。これにより、全てが静止型FCとなる。

横浜市港北区の2基を静止型FCとすることで電気使用量を年約4000万キロワット時、二酸化炭素(CO2)排出量を同約2万トン削減できる見通し。また同10億円弱のコスト削減を見込む。

東海道新幹線の富士川以東の地域では、FCで周波数を50ヘルツから60ヘルツに変換して電気を使う。周波数変換にパワー半導体を使う静止型FCは省エネ性に優れ、回転型FCから置き換えが進むが、大電流や過負荷に弱いという弱点があり、回転型を一部に残していた。

今回、JR東海は大電流や過負荷を防ぐ二つの制御技術を開発した。鳥や蛇の架線接触で地面に電流が流れる「地絡」が起きると、FCが自動停止する電流の水準(閾値)を数ミリ秒で超えてしまう。そこで新技術では電流増加を検知すると数マイクロ秒で電圧を急激に下げ大電流を抑制する。

もう一つは運行状況から30―60秒後の過負荷を予測する技術で、自動で対象区間の新幹線に加速制限の指示を出し、過負荷を防ぐ。

回転型FCは大型モーターと発電機を組み合わせたもの。新幹線の開業以来70年近く使われており、エネ損失のほか技術継承にも課題がある。

日刊工業新聞 2023年05月26日

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