積み降ろし・搬送自動化、物流業界の需要を掘り起こすロボットたちの実力
ロボット業界が物流業界への提案を強化している。コロナ禍による巣ごもり需要でインターネット通信販売が好調。トラック運転手や倉庫作業者の人手不足は深刻だ。一方、ロボット需要の基礎の一つとなっていた自動車産業が、本格的な電気自動車(EV)化を前にエンジン車への設備投資を絞っている。ロボット関連各社は新たな提案で物流関連需要を掘り起こそうとしている。(編集委員・村国哲也、同・広瀬友彦)
住友商事マシネックス(東京都千代田区)は日本で総販売元を務める韓国の斗山(ドゥーサン)ロボティクス製の協働ロボットが好評だ。リーチ1500ミリメートルで最大可搬質量25キログラムのタイプもあり、従来は人手に頼っていた2リットルペットボトル8本入り段ボールの積み降ろしも自動化できる。2日の研修で操作できるのも特徴だ。「手軽に可能なところからの自動化を提案する」と担当者は話す。
オムロンも物流現場での簡単な自動化を提案する。協調ロボット「TM」をベースに、段ボール箱をパレットに積み付ける移動式のパレタイズシステムを試作した。限られた狭いスペースに設置でき、高さ1800ミリメートルまで積み上げが可能だ。「人手の作業はもう限界」と担当者は自動化が喫緊の課題だと力説する。工場での製品出荷工程などの需要を開拓する。
新しいシステム提案の動きもある。村田機械は、ロボット台車がジャングルジムのようなフレームに沿って前後左右上下に移動する3次元(3D)ロボット倉庫システム「アルファボット」を提案する。アルペンが採用第1号の物流倉庫を愛知県小牧市に稼働した。業務を6割効率化する計画だ。
オークラ輸送機(兵庫県加古川市)は「荷物データを自動収集できる自動荷降ろし技術」を佐川急便や早稲田大学らと開発している。内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)により進めるスマート物流サービス実現のプロジェクトだ。同システムのプロトタイプも完成し、2023年4月に発売する方針だ。
ダイヘンは工場の工程間搬送などを自動化する新しい無人搬送車(AGV)を開発した。最大積載重量1000キログラム、自律で全方位移動する。従来機比1・5倍の高速走行を実現。オプションでけん引仕様、フォークリフト仕様を提案し、顧客の困り事を起点に今後も仕様を増やす方針だ。
発売は22年夏以降を計画。工場の自動化システムとして、産業用ロボットの提案も併せて行う。展示会では「FA(工場自動化)現場の方だけでなく、食品を扱う事業者からもけん引仕様に興味をもってもらえた」(FAロボット事業部)という。ダイヘンによると産業用ロボットメーカーで本格的なAGVを手がけるのは珍しいという。