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大気圧超える力で吸着できるスゴいグリッパーの仕組み

神戸高専が開発
大気圧超える力で吸着できるスゴいグリッパーの仕組み

新型吸着グリッパーの構造(神戸高専提供)

神戸市立工業高等専門学校の清水俊彦准教授、渋谷拓海専攻科生らは、大気圧を超える力で吸着できる真空吸着グリッパーを開発した。グリッパー表面に細かな微細毛を形成し、分子間力で対象にくっつく。真空吸着では大気圧以上の力で吸着できず、力を得るために最低限必要な吸盤面積が決まっている。実験で真空吸着以上の吸着力を確認。壁上りロボットやマテハンに提案していく。

柔軟に変形して対象に密着するグリッパーの表面に微細毛を形成した。微細構造を持つ光学部品を型としてシリコーン樹脂を固めると微細毛に覆われたシリコーン膜ができる。

この微細毛膜で粉体を包み、変形グリッパーを構成する。変形グリッパーは二重構造で、内側と外側のリブの硬さをそれぞれ調整できる。内側を固めてから吸引すると真空吸着で対象に張り付き、内側のリブが柔らかいまま吸引してから固めると対象を包むように密着する。それぞれ壁面への吸着と小物把持に使硬さ調整と真空吸引の順番を変えることで、グリッパーが対象の形に合わせて変形しながら密着する。ここで微細毛が対象と接触し分子間力で相互作用する。

実際にグリッパーは同じ構成で、微細毛膜に変えると吸着力が増加した。

現在は基本原理を確かめた段階。今後、微細毛の形状を最適化し分子間力による効果を向上させる。真空吸着の力は1平方ミリメートル当たり最大0・1ニュートンだが、分子間力は同0・3ニュートンとされる。原理的には効果が加算されるため、4倍程度の吸着力を実現できる可能性がある。微細毛と分子間力による吸着はヤモリの足裏で利用されている。

日刊工業新聞2022年3月8日

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