自動車用ガラスの樹脂化へ一手。ポリカ樹脂にシリカ薄膜を高速で成膜できる装置を開発
慶応大とダイキョーニシカワ
慶応義塾大学理工学部の鈴木哲也教授らとダイキョーニシカワは、曲面を持った大面積のポリカーボネート樹脂に透明なシリカ薄膜を高速で成膜できる装置を開発した。板状の電極の端からプラズマを樹脂基材へ噴き出して成膜する機構を試作。曲面形状のある大面積の基材に大気圧下でも成膜できる。成膜したシリカ薄膜の耐摩耗性が自動車利用の基準値をクリアした。これらが実用化すれば自動車用ガラスの樹脂化に近づく。
従来法では基材を板状の電極で挟み、電極と基材の隙間にプラズマを生成し成膜していた。このため平面で2ミリメートル厚の基材が成膜の限界で自動車部品としての利用が難しかった。新機構は基材の厚さに関係なく、狙い通りに成膜できた。
今回、大気圧プラズマ化学気相成長(CVD)法の機構を見直し、電極間の片側から希釈ガスを流して反対側からプラズマを外に噴出するように改善した。
従来は挟むため形状に制約があったが、新機構は大きさが自由で、はけのように基材に当てて成膜できる。ロボットに装着すれば自動化も可能という。
透明シリカ薄膜は独自のもので、密着性や硬度について自動車部品として利用できる基準を満たしている。ダイキョーニシカワでは量産に向けた装置の検証を進めるほか、成膜前の下塗り(プライマー)を省いて生産コストを減らす技術の開発も進める。
自動車関連メーカーは燃費向上を目的に部品の軽量化を進めている。
ガラスを樹脂化すると従来比で2―3割の重量を削減できる。
日刊工業新聞2021年8月24日