ニュースイッチ

「活版印刷」に会いに行こう!大日本印刷の「活字館」

「活版印刷」に会いに行こう!大日本印刷の「活字館」

大日本印刷の本社ビルに隣接する「市谷の杜 本と活字館」

活版技術身近に体験

大日本印刷は出版印刷の拠点だった市谷工場跡地に建設した「市谷の杜 本と活字館」の一般公開を始めた。同社の前身の一つである秀英舎の50周年記念に建てた営業所棟を復元した外観や、同工場で活躍していた活版印刷の道具が並ぶ館内は新しくもレトロな雰囲気が漂い、1日最大25人の予約枠は連日、すぐに埋まってしまう。

1階では文字のデザインに始まり、活字の製造や製本など、書籍・雑誌ができるまでの工程を紹介。中でも目を引くのは、入り口近くにある大きな平台印刷機だ。発見時こそ動かせる状態ではなかったが、同社の技術者の手で稼働可能な状態に復元された。

修復の際に内部から1941年(昭16)の新聞が出てきた。詳しい製造時期は不明だが、大正―昭和初期に稼働したものと推定している。コーポレートアーカイブ室の飯島由紀副室長は「金属の供出も求められた時代。これだけ大きな機械が残っているのは珍しいのではないか」と語る。

印刷機の奥には、膨大な量の活字を収めた活字棚が並ぶ。原稿に沿って活字を拾う「文選」の現場を再現したエリアは、普段立ち入ることはできない。だが、緊急事態宣言の解除後には見学ツアーも企画したいという。

需要が大きく減ってしまった活版印刷は、技術伝承や後継者の育成が課題。技術を身近に感じてもらう仕掛け作りに余念がない。今後は透明スクリーンを活用して文選を体験できるアトラクションも提供する予定だ。

2階には卓上型の活版印刷機や、さまざまなプリンターをそろえた制作室と企画展を開催する展示室がある。展示室では5月まで営業所棟の修復・復元の軌跡を資料や映像で紹介している。

戦前に使われていた平台印刷機が稼働する様子を見学できる

“時計台”と呼ばれ親しまれた営業所棟の再現に喜ぶ声は多い。その一方で「市谷工場をよく知る人ほど再開発による雰囲気の変化に驚く」(飯島副室長)。高層ビルの足元で新旧が交差する独特な空間を形成している。

※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、当面はウェブサイトからの完全予約制。

【メモ】▽開館時間=平日11時半―20時、土日祝10―18時▽休館日=月・火曜日(祝日は開館)▽入館料=無料▽最寄り駅=JR、東京メトロ南北線・有楽町線、都営地下鉄新宿線「市ケ谷駅」、都営地下鉄大江戸線「牛込神楽坂駅」▽住所=東京都新宿区市谷加賀町1の1の1▽電話番号=03・6386・0555
日刊工業新聞2020年3月19日

編集部のおすすめ