運用ルールどうなる?―大盛況の第1回国際ドローン展、関連企業50社が出展
日本能率協会(JMA)主催の「第1回国際ドローン展」が20日、千葉市美浜区の幕張メッセで開幕した。飛行ロボット(ドローン)関連の企業計50社が出展。装置本体や周辺機器、またドローンを用いた各種サービスをアピールしている。会期は22日18時まで。
プロドローン(東京都千代田区)は最大積載量30キログラムの大型機「PD6―B」をはじめ、自社製ドローン4機種を中心にブースを構成。製品の生産、仕様変更、操作教育、保守などについて一体的に対応できる体制が強み。特に顧客側の用途に合わせて仕様を調整することは多く、「コンサルティング力が強みになっている」(市原和雄取締役開発統括)という。宣伝動画用の空撮や測量などを中心に受注は好調。今後は警備、物流向けなどの開拓も目指す。
千葉大学大学院の野波健蔵特別教授が率いる自律制御システム研究所(千葉市稲毛区)も、自社設計の業務用ドローンを出展している。標準型のほか、インフラ点検型や農薬散布型など特殊仕様の製品もPR。全地球測位システム(GPS)とレーザースキャナーを組み合わせ障害物の回避などを確実に行えるようにしている。6月末には独自開発のシミュレーションソフトも投入する予定。活用することで「ドローン導入のハードルを下げられる」(総務部広報課)としている。
初日から多くのブースに人だかりができるなど大盛況で、社会的な関心度の高さをうかがわせた。プロドローンの河野雅一社長は運用ルールの不十分さを指摘しつつも「うまく使えば産業革命をもたらす可能性がある」とドローンビジネスに期待。各社が紹介する多様なドローン活用法は、市場のさらなる広がりを予感させる。
(日刊工業新聞2015年05月21日 機械・ロボット・航空機面)
<関連記事>
卓見異見/ドローンと規制−東京大学教授・坂村健
【官邸屋上事件で脅威論】
飛行ドローン(飛行ロボット)が首相官邸の屋上に落ちていた、というニュースが話題になっている。普段は「規制緩和」を言うマスコミが、こういう事件が起こると早速「規制強化」を言い立てている。確かに、ことドローンに関しては「規制大国」日本には珍しくほとんど規制がない状況だ。航空法ではドローンは模型飛行機の分類で、空港周辺などを除けば高度250メートルまでなら届け出なしに飛ばせるし、免許等の制限もない。
【公共の利益とバランス】
テロ対策としての規制はと考えると、冷静に考えればわかるが、法律を守らないのがテロリスト。「首相官邸上空ドローン飛行禁止」と決めるだけで済むならこんな楽な話はない。また、実際問題として土地の空中権があるので、他人の頭上で飛ばすには今でも地権者の許可が必要だ。首相官邸の屋上を報道ヘリが撮影しているように商業用の有人航空機が他人の家の上も飛べるのは、操縦免許、安全基準、機種認定、点検規則、飛行申請、保険などの制度によりリスク管理され、公共の利益とのバランスで許されているからにすぎない。
今でもドローンの実験ができる場所がなくて、研究者が困っているぐらいで、どこでも勝手に飛ばせるなどという話はない。むしろ、日本のドローン開発者が希望しているのは、有人航空機のような皆が納得する規制を早く制定して、社会的に商用ドローンの立ち位置を定めてほしいということだ。
【将来につながる規制を】
少し前に、自動車爆弾テロが多発し問題になったが、これが今下火なのは「規制」が整備されたからではない。施設への進入路の設計や障害物の配備など、重要施設での自動車爆弾対策が進んだからだ。テロ先進国の米国は、首相官邸と違い、規制に頼るのでもなくホワイトハウスの屋上に狙撃銃を持つ特別要員を常時配置している。
実際問題として、ドローンは見知らぬ脅威だから過剰に恐れられているだけ。軍用ではなく民生用のドローンは自動車爆弾や航空機の自爆テロに比べればはるかに排除しやすい。軽く華奢(きゃしゃ)で、かすみ網でも止められるし、大出力電波でも動作不能にできる。パニックになる必要はない。規制をするなら、免許と併せ自動車のように、電波や光を使って誰何(すいか)に答えるトランスポンダー式の電子的なナンバープレートを義務付け、不審ドローンを簡単に識別できる次世代航空管制システムといった将来につながる方向で進むべきだろう。
海外では倒れた人のもとにすばやく飛ぶ自動体外式除細動器(AED)ドローンも開発されている。ドローンで助かる命もある。テロリスト抑止にもならず、社会の発展を止めるような「規制」なら百害あって一利なしだろう。
【略歴】さかむら・けん 79年(昭54)慶大院工学研究科博士課程修了、同年東大助手、96年教授、00年から東大院情報学環教授。工学博士。84年TRONプロジェクトリーダー、01年YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長。東京都出身、63歳。
プロドローン(東京都千代田区)は最大積載量30キログラムの大型機「PD6―B」をはじめ、自社製ドローン4機種を中心にブースを構成。製品の生産、仕様変更、操作教育、保守などについて一体的に対応できる体制が強み。特に顧客側の用途に合わせて仕様を調整することは多く、「コンサルティング力が強みになっている」(市原和雄取締役開発統括)という。宣伝動画用の空撮や測量などを中心に受注は好調。今後は警備、物流向けなどの開拓も目指す。
千葉大学大学院の野波健蔵特別教授が率いる自律制御システム研究所(千葉市稲毛区)も、自社設計の業務用ドローンを出展している。標準型のほか、インフラ点検型や農薬散布型など特殊仕様の製品もPR。全地球測位システム(GPS)とレーザースキャナーを組み合わせ障害物の回避などを確実に行えるようにしている。6月末には独自開発のシミュレーションソフトも投入する予定。活用することで「ドローン導入のハードルを下げられる」(総務部広報課)としている。
初日から多くのブースに人だかりができるなど大盛況で、社会的な関心度の高さをうかがわせた。プロドローンの河野雅一社長は運用ルールの不十分さを指摘しつつも「うまく使えば産業革命をもたらす可能性がある」とドローンビジネスに期待。各社が紹介する多様なドローン活用法は、市場のさらなる広がりを予感させる。
(日刊工業新聞2015年05月21日 機械・ロボット・航空機面)
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【官邸屋上事件で脅威論】
飛行ドローン(飛行ロボット)が首相官邸の屋上に落ちていた、というニュースが話題になっている。普段は「規制緩和」を言うマスコミが、こういう事件が起こると早速「規制強化」を言い立てている。確かに、ことドローンに関しては「規制大国」日本には珍しくほとんど規制がない状況だ。航空法ではドローンは模型飛行機の分類で、空港周辺などを除けば高度250メートルまでなら届け出なしに飛ばせるし、免許等の制限もない。
【公共の利益とバランス】
テロ対策としての規制はと考えると、冷静に考えればわかるが、法律を守らないのがテロリスト。「首相官邸上空ドローン飛行禁止」と決めるだけで済むならこんな楽な話はない。また、実際問題として土地の空中権があるので、他人の頭上で飛ばすには今でも地権者の許可が必要だ。首相官邸の屋上を報道ヘリが撮影しているように商業用の有人航空機が他人の家の上も飛べるのは、操縦免許、安全基準、機種認定、点検規則、飛行申請、保険などの制度によりリスク管理され、公共の利益とのバランスで許されているからにすぎない。
今でもドローンの実験ができる場所がなくて、研究者が困っているぐらいで、どこでも勝手に飛ばせるなどという話はない。むしろ、日本のドローン開発者が希望しているのは、有人航空機のような皆が納得する規制を早く制定して、社会的に商用ドローンの立ち位置を定めてほしいということだ。
【将来につながる規制を】
少し前に、自動車爆弾テロが多発し問題になったが、これが今下火なのは「規制」が整備されたからではない。施設への進入路の設計や障害物の配備など、重要施設での自動車爆弾対策が進んだからだ。テロ先進国の米国は、首相官邸と違い、規制に頼るのでもなくホワイトハウスの屋上に狙撃銃を持つ特別要員を常時配置している。
実際問題として、ドローンは見知らぬ脅威だから過剰に恐れられているだけ。軍用ではなく民生用のドローンは自動車爆弾や航空機の自爆テロに比べればはるかに排除しやすい。軽く華奢(きゃしゃ)で、かすみ網でも止められるし、大出力電波でも動作不能にできる。パニックになる必要はない。規制をするなら、免許と併せ自動車のように、電波や光を使って誰何(すいか)に答えるトランスポンダー式の電子的なナンバープレートを義務付け、不審ドローンを簡単に識別できる次世代航空管制システムといった将来につながる方向で進むべきだろう。
海外では倒れた人のもとにすばやく飛ぶ自動体外式除細動器(AED)ドローンも開発されている。ドローンで助かる命もある。テロリスト抑止にもならず、社会の発展を止めるような「規制」なら百害あって一利なしだろう。
【略歴】さかむら・けん 79年(昭54)慶大院工学研究科博士課程修了、同年東大助手、96年教授、00年から東大院情報学環教授。工学博士。84年TRONプロジェクトリーダー、01年YRPユビキタス・ネットワーキング研究所所長。東京都出身、63歳。
日刊工業新聞2015年05月04日 パーソン面より抜粋