本音で仕事ができていなかったトヨタとスバルが「仲良く喧嘩」
トヨタ自動車とSUBARU(スバル)の関係の深まりを示す新型車が披露された。共同開発したスポーツ車でトヨタ「GR86(ハチロク)」とスバル「BRZ」だ。この2代目となる兄弟車は、初代で築いた走りのバランスの良さを維持しながら性能を向上させたという。この難題を克服できた背景には、2019年に相互出資を決めたことがある。建設的にけんかできる仲に関係性を進化させ、自信作に仕上げた。
「実は19年まで本音で仕事ができていなかった。遠慮があった」―。ハチロク/BRZの共同開発は、05年から続く両社提携の代名詞とも言える取り組みだが、スバルの藤貫哲郎常務執行役員CTO(最高技術責任者)はこう裏を明かした。
19年といえば以前からのトヨタからスバルへの出資に加え、スバルからトヨタへの出資に踏み切ると発表した年。また同時にトヨタはスバルへの出資比率引き上げ、持ち分法適用会社化することを決めた。
今回のプロジェクトでは両社で開発手法が異なるために生じたあつれきや、最終局面での急な変更など幾多の困難があったが、トヨタの佐藤恒治執行役員は「仲良くけんかできる関係になった」と笑顔を見せる。ハチロク/BRZは秋までに市場投入される。
続く成果として期待される一つが電気自動車(EV)の共同開発だ。両社は転機となった19年に、EV開発で連携することも明らかにした。
中国・上海で開催中の「上海モーターショー」でトヨタはEVの新ブランド「トヨタbZ」の概要を発表。第1弾として、スバルと共同開発の中型スポーツ多目的車(SUV)「トヨタbZ4X」を22年半ばまでに投入する計画を示した。
スバルもトヨタとの共同開発EVを20年代前半に投入する方針を示している。自動車づくりでは「『らしさ』を磨く」(中村知美スバル社長)というのがスバルのぶれないスタンス。
2代目ハチロク/BRZの共同開発で培った仲良くけんかできる対等関係を深め、EVプロジェクトを成功させられるか注目される。
(取材・国広伽奈子)