子育て世代の目線で街づくり 変わるか行政

埼玉県戸田市の挑戦

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戸田市政策研究シンポジウムで講演する法政大の中嶋さん
子ども目線で施設整備

 結婚から妊娠、出産、子育てまでの支援に力を入れる埼玉県において、市民の平均年齢が39・9歳(2015年1月時点)と県内で最も若い戸田市は、年齢構成など市の特徴を生かした街づくりの可能性を模索している。戸田市は法政大学、目白大学の2大学とそれぞれ共同研究を実施。大学と市で研究成果を共有し、今後の市政運営に生かす取り組みなどを進める。
  
 【2大学と共同研究】
 3月に開かれた戸田市政策研究所によるシンポジウム。市と目白大学の共同研究は、公共施設や区画整理などに「子ども」の目線を取り入れる必要性を指摘した。講演を行った社会学部地域社会学科高久聡司専任講師は、「近年の校庭の芝生化など、その時代の政府が推進する事業と子どもの意向が一致した事業は比較的波及しやすい」と述べた。続けて「大人が言及する『子どものため』という論理は妙に説得力を持つが、それは本当に子どもの希望を反映しているかは別なのでは」と疑問を投げかける。

 公園に設置する遊具についても、子どもを持つ若い世代と子どもを持たない高齢者などでは希望するものが大きく異なる。実際に同市民へのアンケートでも、子どもは「ブランコ」といった遊具を希望するが、大人からは高齢者向けの健康遊具を希望する声が大きい。また、子育て世代と一口に言っても子どもの成長段階で要望は異なる。乳幼児の親は公園を親自身の憩いの場としても捉える一方で、小学校低学年の子どもを持つ親は、そこで遊ぶ子どもの安心や安全により高い関心を示す傾向があるという。

 【特性見据え新産業】
 また「『新しいまち』に向けた創造性の検証」をテーマに、戸田市と法政大学地域研究センターは共同研究を実施。同センターの中島由紀客員研究員は「地域の特徴や文化を生かした取り組みこそイノベーションを生み、その都市のアイデンティティーを確立する」と、地域特性を見据えた産業創出の重要性を訴えた。

 【市民SNSアプリ】
 実際に市内の子育て世代が増加していることから、母親同士の交流なども重要視している。この特徴を生かし、14年12月にスマートフォンアプリケーション(応用ソフト)「tocoぷり」の運用を始めた。アプリの機能としては(1)写真や位置情報をリアルタイムで発信する「広報」(2)市民の意見を行政に伝える方法の一つとなる「公聴」(3)ネット上の「憩いの場」がある。SNSに似ていることから、若年層に受け入れやすい内容となっている。
 同アプリは市民と行政が共に街づくりを進めるために、検討市民会議などを開き、開発段階から一緒に手がけた。こうした行政と市民との協働による新たなサービスの創出に期待がかかる。

日刊工業新聞 2015年4月9日列島ネット面

COMMENT

神崎明子
デジタルメディア局
編集委員

子育て世代重視の姿勢は、施設などハード整備にとどまらず、他の自治体にはない多様なサービスなどソフト面でも発揮されることを期待します。

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