「LNG」「CCU」「水素・アンモニア」…市場活況、エンジ3社に問われるプロジェクト遂行力
脱炭素への道筋が多様化して市場が活況になりつつある中で、エンジニアリング専業3社のプロジェクト遂行力が問われている。エネルギートランジション(移行)を担うエネルギーとして液化天然ガス(LNG)の需要が伸びるほか、二酸化炭素(CO2)の回収・利用・貯留(CCUS)、水素・アンモニアなど脱炭素案件のニーズも高まっている。既存の石油・ガス分野に加えて新領域の案件創出が加速することで、技術力やリスク管理を含めた総合力が重要になる。(八家宏太)
シェールガス開発などにより、今やLNGプラントの主戦場の一つとなった米国。トランプ次期大統領が化石燃料回帰の施策を打ち出すことも可能性の一つとして予想され、LNGプラント案件が一層増えるとの見方がある。
世界的に資材高騰や人手不足といったコスト変動要因などのリスクが増えており、受注に至る最終投資決定が遅れているものの、2025年には米国内の施策が明確になる過程でLNG案件の具体化が期待される。またLNGに限らず、新エネルギー関連の研究開発も継続されており、案件として具体化する可能性がある。
市場が活況を迎えつつある中で、リスク対応も一層重要性を増す。エンジ各社は再度、足元のリスク管理を強化。受注案件の選別時の分析や受注後のプロジェクト進捗(しんちょく)管理を強化し、遂行能力向上を狙う。
日揮ホールディングス(HD)は設計・調達・建設(EPC)子会社の組織改定や、エンジニアなどの人的リソースの最適化などを進めている。千代田化工建設は顧客とリスクを分担する契約について交渉している。東洋エンジニアリングも組織改定などでリスクに対する経営判断の迅速化を図る。
足元ではLNGなどの案件が豊富だが、中長期で脱炭素・低炭素化が進むことは確実視される。こうした動きを見据えて各社も強みを生かした取り組みを実施している。
千代田化工はトヨタ自動車と大規模水電解システムの共同開発で水素製造市場への対応を進めており、日揮HDは持続可能な航空燃料(SAF)の製造に向けた企業間連携を拡大・強化。東洋エンジは東南アジアでの再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニアや地熱案件に取り組んでいる。
エネルギーのニーズが各国、地域ごとに多様化していく中で案件を事業化し収益化するためには、リスク管理の徹底とともに、これまでエンジ業界で培ってきた総合力が試されることになる。