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東海理化・豊田鉄工・豊田合成…車部品メーカーが拡大、「バイオマス材料」の生かし方

東海理化・豊田鉄工・豊田合成…車部品メーカーが拡大、「バイオマス材料」の生かし方

東海理化が手がけるバンブープラスのサンプル。自動車内装品に求められる品質をクリアしている点などが評価されている

自動車部品メーカーが開発を進めてきたバイオマス樹脂材料の事業が本格化している。東海理化は竹由来の樹脂材料「BAMBOO+(バンブープラス)」の量産を2025年7月に開始予定。自動車の内装部品に適用できる物性を実現し環境対応の需要に応える。このほかにも愛知県の部品メーカー各社は、独自のバイオマス材料の品質や社会貢献性などを訴求し、幅広い用途向けに拡販している。(名古屋・増田晴香)

東海理化/竹繊維配合樹脂を量産

東海理化は高知県香南市に延べ床面積が約1万1600平方メートルの新工場を取得。バンブープラスの一貫製造ラインを整備し量産を開始する。現状「年間約400トンの引き合いがある」(石田智執行役員)とし、急ピッチで準備を進めている。

同材料は竹繊維を51%以上配合しており、一般的なバイオマス材料と比べても高配合な点が特徴だ。これに加えて、自動車内装品に求められる品質をクリアしている点などが評価されている。これまではラボレベルでの生産だったが、量産工程でも高品質を確保し拡販を目指す。

ペレットとして販売し、通常の成形機で成形できるため、さまざまな用途を想定する。二之夕裕美社長は「難燃性が向上した材料もトライしており、建材などへの採用も広げたい」と期待する。

豊田鉄工/CNFでガラス繊維代替

豊田鉄工(愛知県豊田市)はイネ科の植物「ソルガム」を使ったセルロースナノファイバー(CNF)を開発している。ソルガムは年2回収穫でき、家畜の肥料やバイオマス発電にも利用される。

豊田鉄工は1人乗り小型モビリティー「Comove」でCNF複合樹脂の活用を検討している(カウル部品)

同社が主力とするボディー部品は軽量化のため樹脂製への置き換えが進む。強度を出すため樹脂にガラス繊維を混ぜるのが一般的だ。一方、ガラス繊維は粉砕の際に破損が激しく、リサイクルが難しい。CNFはリサイクルも可能で部品を軽量化しながら二酸化炭素(CO2)削減、資源循環に貢献できるとみる。

自動車部品での採用に向けては、ガラス繊維と比べた時の強度やコスト面での課題が依然多い。同社材料開発室の吉田尚史室長は「最終目標は自動車向けとしつつ、当面はやれるところから始める」と展望を示す。例えば同社が開発する1人乗り小型モビリティー「Comove(コモビ)」での使用を検討しているという。

豊田合成/ハンドルにスギ成分活用

豊田合成はスギの成分を配合した樹脂を開発した。スギの主成分である「リグニン」を工業材料として化学的に抽出した物質「改質リグニン」を、ウレタンやナイロンに配合した。この物質は耐熱性や加工性に優れ、今後ハンドルなどの内外装部品への適用を視野に入れている。

同社は元々、スギ材に4―5割含まれるセルロースをCNF強化プラスチックとして使う取り組みを進めてきた。さらなる有効活用に向けて、同様にスギ材に3割ほど含まれるリグニンに着目。森林研究・整備機構と共同で「改質リグニン配合プラスチック」を開発した。これによりスギ材の大部分を活用できるようになった。

改質リグニン配合ウレタンを使用して豊田合成が製作したハンドル

政府の花粉症に関する関係閣僚会議は23年5月、花粉症の発生源対策として10年後にスギ人工林を約2割減らし、30年後に花粉の発生量を半減させる目標を示した。達成のためには伐採面積を増やす必要があるとともに、伐採したスギ材の需要拡大策も欠かせない。豊田合成はスギ材を有効活用する取り組みを推進し、木材としての価値を高めて社会貢献にもつなげる構えだ。


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日刊工業新聞 2024年12月27日

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