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5G時代のセキュリティーで先陣を切ったトレンドマイクロ

5G時代のセキュリティーで先陣を切ったトレンドマイクロ

AIスピーカー(右)などさまざまな機器を最適なセキュリティーポリシーの下で管理できる

 トレンドマイクロは第5世代通信(5G)時代に向けて、「ネットワーク・スライシング(分割)」と呼ぶ、次世代の通信方式に対応したセキュリティー製品を8月下旬に投入する。ネットワーク・スライシングはすべてのネットワーク資源を仮想化して動的に組み合わせ、異なるサービスを実現する方式。これにいち早く対応することで、2020年頃に商用化が見込まれる5G向けセキュリティー製品で先駆ける。

 5Gシステムでは低遅延・高信頼や低速・大量端末接続などさまざまな条件が求められる。これらに対応できるように、ネットワーク・スライシングでは同じ装置を使いながら、複数のネットワークシステムがあるかのような仮想環境を動的に作り出す。

 ネットワーク・スライシングは一般には理解しにくいが、複数の交通が併用している「巨大な橋」をイメージすると分かりやすい。一つの橋でも交通路を分割すれば、列車や車が安全に行き来でき、人も自転車も通れる。つまり、仮想化技術によってネットワークをスライス(分割)することで、対象とする端末やシステム、サービスごとに最適な環境が提供できる。

 こうした次世代のネットワーク環境においてセキュリティー対策を実現できるように、トレンドマイクロは各階層に応じて異なるセキュリティー機能を動的に配置する「セキュリティーVNF(バーチャル・ネットワーク・ファンクション)」を推奨している。

 例えば家庭内のIoT(モノのインターネット)環境の場合、パソコンやタブレット端末、人工知能(AI)スピーカーなど多くのIoTデバイスがあり、それぞれネットワークスライスを介してインターネットに接続する。

 通信開始直後は各デバイスの種別が識別されていないため、それぞれの通信は最も厳しいセキュリティーポリシーが設定されているネットワークスライスに入れられ、ほとんどの通信がブロックされた状態になる。

 その後、流れる通信トラフィックからデバイスの種別を認識すると、スライスされたネットワークに逐次入れられていく。これにより、トレンドマイクロは「各デバイスはそれぞれ最適なセキュリティーポリシーの下で管理が可能」という。

 IoTの本格期となる5G時代では、大量の通信トラフィックが飛び交う。通信速度は毎秒10ギガビット(ギガは10億)以上と、既存高速通信サービスLTEの1000倍にも達する。セキュリティーVNFを推奨するトレンドマイクロは「今後、ネットワークスライスの規格がどのようになっても対応できる」としている。
日刊工業新聞2018年6月28日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 第5世代通信(5G)の規格化は、世界の通信事業者などで組織する国際標準化団体「3GPP」が主導している。6月に5Gの主要機能の全仕様が決まり、2020年頃の商用化への道筋も固まったところ。今回のトレンドマイクロがそうであるように、5Gのセキュリティー技術を巡る先陣争いは今後一段と激化しそうだ。 (日刊工業新聞社・齋藤実)