厚み最小1cm、産総研が「曲がるX線検出器」開発
産業技術総合研究所の加藤英俊研究グループ長と藤原健企画主幹らは、曲がるX線検出器を開発した。最薄部は厚みが1センチメートルで配管の隙間などに差し込んで撮影できる。持ち運べる小型X線源と組み合わせる。プラントなどの込み入った環境でのX線検査向けに提案していく。
柔軟なポリイミドフィルム上にX線の受光素子を形成した。画素数は3072×2560で、4Kカメラの9割の解像度に当たる。パネルの大きさは43センチ×36センチメートルで、画素の大きさは0・14ミリメートル。X線検査で配管中のクラックや析出物、厚みなどを撮影できる。
従来はガラス基板上に受光素子を形成していた。ポリイミドフィルムは軟らかいため曲げられる。直径30センチ―40センチメートル程度の円弧に曲げ、配管に沿わせて撮像可能。配管と配管の接続部や曲げ部など、消耗しやすい箇所の点検に向く。
ガラス基板のX線検出器と同等以上の感度を実現した。撮像結果は可逆圧縮方式のTIFFデータとして出力するため、データを管理しやすい。X線検査がデジタル化する前は感光フィルムで撮影しており、曲面撮影の技術があった。デジタル化で検出器が固いパネルになり、撮影は不便になったがデータを蓄積管理しやすくなった。新技術で曲面撮影とデータ管理の利点を両立したことになる。
プラント配管は断熱材などに包まれていると目視検査や打音検査が難しい。曲管や接続部などが内容物に削られ減肉するため、定期的に交換している。稼働中に確認できると交換やプラント停止を最小限に抑えられる。
日刊工業新聞 2023年10月25日