ニュースイッチ

PCR検査感度100倍、産総研が開発した装置の中身

PCR検査感度100倍、産総研が開発した装置の中身

開発した3D測定装置

産業技術総合研究所の安浦雅人主任研究員と福田隆史研究チーム長らは、PCR検査を従来比で約100倍高感度化する測定装置を開発した。微小液滴中でPCR反応などの信号増幅反応を進め、試料を3次元(3D)撮影してデオキシリボ核酸(DNA)などの有無を捉える。この反応を数ミリリットルサイズで実行できる。従来は容量が0・1ミリリットル以下に限られていた。検出限界が下がり、低濃度のウイルスなどを見逃しにくくなる。

油中に10億個程度の水滴を作り、水滴一つひとつの中でPCR反応などで信号を増幅してから計測する。極希薄な条件では採取した試料に検出対象が含まれない確率が上がる。そこで試料の量を約100倍に増やした。数ミリリットルの試料中にウイルスが一つしかなくても増幅すれば検出できる。

数ミリリットルの試料を測定できる装置を設計した。通常、油中に水滴を作ると白濁してしまう。そのため液滴を平面に広げて撮影していた。すると0・1ミリリットル以下しか測定できない。

今回、油と水の屈折率を0・001以下に調整して透明な液滴を作成した。この透明試料にシート状の励起光を照射して蛍光を上から撮影する。シート光を上下に走査して連続撮影すると、3D像が得られる。蛍光で光った液滴中にウイルスが含まれ、試料中に存在したウイルスの数を数えられる。

透明化で3D撮影が可能になり、試料の容量を増やせた。大容量化で検出限界が下がり、検査効率が向上した。信号増幅の手法はPCR反応だけでなく、抗体検査や酵素反応などを選べる。パートナー企業を探して実用化を目指す。

日刊工業新聞 2023年09月18日

編集部のおすすめ