ニュースイッチ

京セラ・村田製作所・太陽誘電…電子部品6社が当期減益の背景

京セラ・村田製作所・太陽誘電…電子部品6社が当期減益の背景

電子部品イメージ

電子部品8社の2023年3月期連結業績は、6社が当期減益となった。22年10月以降、高級ノートパソコン(PC)など民生機器向け需要が欧米でも減速。データセンター(DC)向けも調整入りしたことで、顧客が手持ちの部品在庫の消化に動き、電子部品メーカーの生産が落ち込んだ。一部メーカーでは減損損失の計上なども利益を下押しした。需要回復に力強さがないため、24年3月期も3社が当期減益を見込む(村田製作所は前期の米国会計基準での実績と比較)。

電子部品8社

23年3月期は一時1ドル=151円台後半と対ドルで約32年ぶりの安値をつけた為替が電子部品の海外販売額を円換算で押し上げ、5社が売上高で過去最高を更新。一方、当期利益は減益が相次いだ。ノートPCやスマートフォンなど多くの機器で生産台数の減少や在庫調整が生じ、「電子部品の市場環境が悪化した」(太陽誘電の福田智光取締役常務執行役員)ことが大きい。

京セラは2期ぶり、太陽誘電は3期ぶりの当期減益。「スマホ向け部品の需要が減速した」(京セラの谷本秀夫社長)。ミネベアミツミは東京本部ビル売却などの効果もあり、過去最高の当期利益を確保したものの、貝沼由久会長兼最高経営責任者(CEO)は「足元の需要は自動車を含め調整のまっただ中」と話す。

23年3月期上期の民生機器は中華系スマホの不振が際立つ中、欧米系は持ちこたえていた。だが下期に入り、先進国でもインフレ懸念を背景に消費者が高額な製品の買い替えに慎重な姿勢を強めた。販売不振を受けて欧米系の顧客も部品在庫の圧縮に動き、電子部品メーカーの生産は実際の部品需要よりも落ち込んだ。村田製作所は工場稼働率と連動する操業度損が前期比で2150億円の営業減益要因となり、円安のプラス効果を打ち消した。

TDKはDC向けハードディスクドライブ(HDD)用磁気ヘッドなどの販売が急減したことを受け、構造改革費用を477億円計上。ニデックも欧州向けモーターの品質問題などに対応するため757億円を計上し、減益の一因となった。

24年3月期は電気自動車(EV)など電動車向け部品の比率が他社より相対的に高く、前の期に計上した減損損失や一時費用がなくなるTDKが7期ぶりの当期最高益を見込む。ミネベアミツミは「半導体不足の解消で、(電動車以外の)自動車の生産も回復に向かうだろう」(貝沼会長兼CEO)とみている。

ただ需要の回復ペースは鈍い。民生機器伸び悩みの一因だった米国のインフレは足元で緩やかに減速しているが、再燃の火種はくすぶっており、消費に力強さがない。DC向け部品の出荷減も当面続くとみられる。


【関連記事】 好調電子部品の受注は失速するのか?
日刊工業新聞 2023年月5月16日

編集部のおすすめ