村田製作所・TDK・京セラ・日本電産が業績予想を下方修正、電子部品で強まる減速感の背景
電子部品大手の業績に減速感が一段と強まっている。大手6社中、村田製作所とTDK、日本電産、京セラの4社が2023年3月期の連結営業利益予想を下方修正した。中華系スマートフォンの需要が想定以上に落ち込み、データセンター(DC)や自動車にも不振が拡大。原材料や物流コスト上昇分などの転嫁遅れも目立つ。最高益が相次いだ前期から様相は一変。在庫削減の動きも鈍く、24年3月期に業績が反転するかは不透明だ。
6社合計の22年10―12月期の連結営業利益は前年同期比15%減の2567億円。コロナ禍による世界経済縮小の影響を受けた20年7―9月以来の前年割れとなった。23年1―3月期も同77%減の487億円に落ち込む見通しだ。業績悪化の要因は主に「需要の下振れ」「材料・エネルギー・物流費高騰分の価格転嫁遅れ」「円安効果の剝落」の三つだ。
村田製作所の村田恒夫会長は「ハイエンドのスマホの需要が落ち込んだ」と話す。TDKはリチウムイオン電池(LiB)やハードディスクドライブ(HDD)向け磁気ヘッドなどが需要予測を下回った。京セラの谷本秀夫社長はスマホなどに使われるSMD(電子部品用表面実装)セラミックパッケージが「年明けから大幅な在庫調整が入っている」と明かす。
中国の景気悪化懸念が強まる一方、半導体不足などを背景に中華系スマホの価格が値上がりし、消費者の購買意欲が後退。米アップルのiPhone(アイフォーン)の需要は比較的堅調だが、コロナ禍の影響で22年秋に中国の主要工場の稼働率が低下。供給面で制約を受け10―12月期の出荷台数が落ち込んだ。米IT大手が業績鈍化でDC投資を見直すなどスマホ以外にも需要不振が波及する。
この結果、電子部品メーカーの工場稼働率が低下し、利益を押し下げる要因となっている。TDKは23年1―3月期に約200億円の構造改革費用を計上。HDD磁気ヘッドやスマホ用LiBの減損に充てる予定だ。
価格転嫁の遅れも目立つ。アルプスアルパインは「材料価格は7―9月期にいったん踊り場になったが、10月以降は再び上昇し、その分の転嫁が難しかった」(小平哲常務執行役員)。同社の車載製品では電気代なども含めたコスト上昇分の製品価格への転嫁率は現状で5割未満にとどまる。円安メリットも薄れつつある。日本電産を除く各社の想定為替レートは平均1ドル=約134円。足元の相場は130円程度だ。
需要鈍化が続けば生産調整が必要になる。10―12月期の6社合計の棚卸し資産は前年同期比36%増の1兆9569億円。月商(期中売上高の3分の1)の何カ月分に相当するかを示す回転月数は2・9カ月と4―6月以降の高水準が続く。
村田製作所は1月以降、主力のMLCC(積層セラミックコンデンサー)の工場稼働率を従来の最大90%から約80%に落とし「膨らんだ在庫を減らしていく」(村田会長)。TDKは「電池の原材料在庫については3月末で前期末を下回るレベルまで落とす予定」(山西哲司専務執行役員)だが調整の歩みは遅い。
大和証券の佐渡拓実・チーフアナリストは「在庫調整終了後、数量回復時に価格低下が生じる可能性もある。24年3月期は需要のけん引役に乏しく、価格低下の度合いによっては想定以上に収益が落ち込みかねない。為替動向と共に注意が必要」とみる。
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