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「電子部品」踊り場抜けきれない…需要回復に力強さ欠くワケ

電子部品大手の業績が踊り場を抜けきれない。2024年3月期の大手5社の連結営業利益予想合計は前期比約9%増の7645億円。回復基調にはあるものの、22年3月期の5社合計8855億円には届かない見通し。顧客の在庫調整が進み、中華系スマートフォン(スマホ)やパソコン需要も夏ごろまでに底打ちするとみられるが、インフレ圧力などを背景に世界で民生品の消費が冷え込む中、業績回復のペースは力強さに欠ける。

大手5社で24年3月期に営業減益を見込むのが村田製作所アルプスアルパイン。村田製作所は今期から会計基準を変更しており、単純比較はできないが、コロナ禍前の19年3月期も下回る見通し。FA関連の制御機器が好調なオムロンや構造改革効果が出るニデックを除けば、総じて厳しい局面が続く。

落ち込みが顕著になったのが23年1―3月期。5社の営業利益合計は84億円と、前年同期に比べて96%減少した。上期の業績を押し上げた円安効果が縮小した上に、工場稼働率が低下。村田製作所は「操業度損が発生した」(南出雅範取締役常務執行役員)。

要因の一つがスマホやパソコン、サーバー向け電子部品需要の減退だ。半導体不足の影響などで先行発注に動いてきたIT機器メーカーがだぶついた在庫の消化を進めた結果、電子部品の発注が最終製品の需要以上に減少した。村田製作所の中島規巨社長は「23年1―3月が(電子部品需要の直近の)底だったのではないか」と説明する。

電子部品大手5社の連結営業利益と前年度比
電子部品大手5社の期中平均棚卸資産

電子部品メーカーも自社在庫を減らす取り組みを進めたが、需要の落ち込みもあって「(計画に比べ)在庫消化が進まなかった」(中島社長)。村田製作所の23年3月末の棚卸資産は過去最高水準の約5750億円。積層セラミックコンデンサー(MLCC)やリチウムイオン電池(LiB)が在庫過多になっている。大手5社合計の23年1―3月の棚卸在庫の期中平均は1兆9100億円以上で、22年10―12月から3%の減少にとどまる。

ただ顧客の在庫消化が進み「(低迷が続いてきた)中国のスマホ市場が少し強くなってきた。今後は需要見合いの注文が入ってくるだろう」(村田製作所の南出取締役常務執行役員)との見方が出始めている。TDKの斎藤昇社長もスマホ需要について「7―9月ごろに底打ちするのではないか」と分析。データセンター向けの需要についても「秋ごろの反転を期待している」(斎藤社長)。

それでも24年3月期が依然厳しいとみられるのは、スマホを中心に需要の回復度合いが緩やかなためだ。村田製作所は24年3月期のスマホの世界需要が11億1000万台と前期比3%の増加にとどまると予測。村田恒夫会長は以前の13億台市場に回復するまでに「数年は必要」と指摘する。TDKの斎藤社長は24年3月期のスマホ需要は「中国市場が増えないだろう」として、前期を2%下回る水準を予想する。

こうした中、村田製作所は夏ごろの工場稼働率を80―85%程度にとどめ、積み上がっている棚卸資産を「適正水準」(中島社長)に戻す方針だ。

一方、需要が広がる自動車向けでは原材料やエネルギーコストの価格転嫁がポイントになりそうだ。アルプスアルパインは「開発から受注まで一貫して見られるような体制に変える」(小平哲取締役常務執行役員)ことで、より精緻な採算管理に努める考えだ。


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日刊工業新聞 2023年月5月9日

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