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「竹」の需要拡大で地域課題を解決。バンブーテクノの取り組みが面白い

「竹」の需要拡大で地域課題を解決。バンブーテクノの取り組みが面白い

加熱水蒸気処理で微粉末化した竹粉(右手前)と、プラスチック混合材による成形品

福岡県の南部に位置し、熊本県と接する八女市は竹の産地。バンブーテクノ(福岡県八女市、山田豊男社長)は、竹を原料にした素材のメーカー。水蒸気を生かす過熱水蒸気処理を使って竹を微粉末化する技術を持ち、産学連携で成形品などの研究開発に取り組む。

同社は地元有志による共同出資で2009年に設立された。背景には、古くから使われてきた竹製品の多くが樹脂製品に取って代わられて需要が縮小したことがあった。竹を切り出す人も高齢化し、そして竹林が放置されることで山が荒れる状況へ対応する地域課題が生じていた。そこで竹を使った製品の需要拡大を目指した。

事務所と工場は中学校跡を活用している。手前は竹材

製品化でテーマとしたのが、微粉末にしてプラスチックと一緒に成形する方法。竹は粉砕が難しいが、九州工業大学が開発した過熱水蒸気処理と微粉末化の技術で成形品に適した素材を完成させた。薬品を使わず、加圧容器を必要としないことも技術のポイントだ。

竹微粉末とプラスチックを混合した材料は、容器などの射出成形とデッキ材などの押し出し成形に対応する。フィルム状にもできる。竹粉の割合を50%以上に高めた製品も可能だ。

成形品は曲げや引っ張りに対する強さを持つ。帯電を防ぎ、静電気の発生を抑える。熱膨張は小さく、寸法安定性に優れるという。これまでにさまざま製品を試作し、各種特性などのデータを蓄積してきた。

処理工程から作れる抽出液の竹酢液は安定した品質が特徴の一つ。過熱水蒸気処理が厳密な温度管理で行われるため実現できる。

安岡丈博取締役は今後の課題に関して「竹だからという理由だけではなく、価格、機能性を認められなければ持続性はない」と話し、コスト削減や製品の色への対応などにも力を入れていく。

また、竹を山から切り出す人材の育成における貢献も視野にある。事業の持続性を考慮しながら、良質な竹を適切に切り出すことを支援していく考えだ。

日刊工業新聞2022年7月5日

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