医療機器大手、成長戦略を診る《オリンパス#02》消耗品で海外勢の壁を突破できるか
「『治療』が重要なキーワードに」(笹社長)
「医療事業をさらに成長させるには『治療』が重要なキーワードになる」。オリンパスの笹宏行社長は今後の事業の重点強化分野についてこう語る。
消化器内視鏡を中心としたオリンパスの医療事業はこれまで右肩上がりで成長を遂げてきた。消化器内視鏡はグローバルで需要が安定的に伸び、医療事業の売上高と営業利益は過去3年間だけでも1・6倍に増加。売上高は6150億円(2015年度見込み)と国内首位になり、営業利益率22%(同)と高い収益性を維持している。
ただ、消化器内視鏡だけに頼っていては医療事業がいずれ隘あい路に陥るという危機感も募らせる。田口晶弘オリンパス専務(医療事業統括)は「病院は増加しないが、症例数は増えていく」と今後の市場環境を分析する。
病院の機能分化などによって高額な診断・検査機器を導入する施設は減る。検査・診断用途の内視鏡の市場は伸び悩むが、治療用のデバイスや処置具の需要は必ず高まる。そこでオリンパスは「外科治療分野での消耗品ビジネスを拡大させる」(笹社長)ことで事業の持続的発展を目指す。
4月からスタートした中期経営計画(16―20年度)には消耗品ビジネスにカジを切るための戦略を盛り込んだ。成長事業として外科、泌尿器科・産婦人科、耳鼻咽喉科、医療サービスの各分野でビジネスユニットを立ち上げ、治療デバイス・処置具の研究開発や世界販売を強化する。血管の封止・止血に使用する電気メス、尿路結石治療処置具、婦人科や耳鼻咽喉科向けの治療デバイスなどのラインアップを拡充していく。
消耗品として治療デバイスや処置具を医療機関に安定・大量・適時提供できる体制もグローバルで整備する。医療事業は20年度に売上高9000億円を目標に掲げ、その半分近くを外科治療分野で稼ぐ。研究開発費は中計5年間で4300億―4800億円を投入。診断技術に過半を投じていた配分も見直し、今後は診断技術6割・治療技術4割に変える。
医療機器メーカーのビジネス環境は今後大きく変わる。装置を単体で売るだけではなく、施設や手術室、症例ごとに必要な機器の一括提供やサービスを拡充しなければ市場で勝ち残れない。そこでオリンパスは新中計の開始前に医療機器子会社を統合した。成長領域に経営資源を振り分けやすくしたほか、研究開発・生産・販売の各部門でグループ融合の相乗効果を見込む。
日立製作所が4月に医療機器子会社の営業・企画部門などを本体に統合し、総合医療機器メーカーとして一体経営体制を構築したのも背景は同じだ。国内各社は変化の兆しを敏感にとらえ、事業構造改革を急ピッチで進めている。体力がなければ改革はできず、事業が好調な時こそ次の成長の種をまかなければならない。
内視鏡がけん引
消化器内視鏡を中心としたオリンパスの医療事業はこれまで右肩上がりで成長を遂げてきた。消化器内視鏡はグローバルで需要が安定的に伸び、医療事業の売上高と営業利益は過去3年間だけでも1・6倍に増加。売上高は6150億円(2015年度見込み)と国内首位になり、営業利益率22%(同)と高い収益性を維持している。
ただ、消化器内視鏡だけに頼っていては医療事業がいずれ隘あい路に陥るという危機感も募らせる。田口晶弘オリンパス専務(医療事業統括)は「病院は増加しないが、症例数は増えていく」と今後の市場環境を分析する。
病院の機能分化などによって高額な診断・検査機器を導入する施設は減る。検査・診断用途の内視鏡の市場は伸び悩むが、治療用のデバイスや処置具の需要は必ず高まる。そこでオリンパスは「外科治療分野での消耗品ビジネスを拡大させる」(笹社長)ことで事業の持続的発展を目指す。
治療器具を拡充
4月からスタートした中期経営計画(16―20年度)には消耗品ビジネスにカジを切るための戦略を盛り込んだ。成長事業として外科、泌尿器科・産婦人科、耳鼻咽喉科、医療サービスの各分野でビジネスユニットを立ち上げ、治療デバイス・処置具の研究開発や世界販売を強化する。血管の封止・止血に使用する電気メス、尿路結石治療処置具、婦人科や耳鼻咽喉科向けの治療デバイスなどのラインアップを拡充していく。
消耗品として治療デバイスや処置具を医療機関に安定・大量・適時提供できる体制もグローバルで整備する。医療事業は20年度に売上高9000億円を目標に掲げ、その半分近くを外科治療分野で稼ぐ。研究開発費は中計5年間で4300億―4800億円を投入。診断技術に過半を投じていた配分も見直し、今後は診断技術6割・治療技術4割に変える。
子会社統合の波
医療機器メーカーのビジネス環境は今後大きく変わる。装置を単体で売るだけではなく、施設や手術室、症例ごとに必要な機器の一括提供やサービスを拡充しなければ市場で勝ち残れない。そこでオリンパスは新中計の開始前に医療機器子会社を統合した。成長領域に経営資源を振り分けやすくしたほか、研究開発・生産・販売の各部門でグループ融合の相乗効果を見込む。
日立製作所が4月に医療機器子会社の営業・企画部門などを本体に統合し、総合医療機器メーカーとして一体経営体制を構築したのも背景は同じだ。国内各社は変化の兆しを敏感にとらえ、事業構造改革を急ピッチで進めている。体力がなければ改革はできず、事業が好調な時こそ次の成長の種をまかなければならない。
日刊工業新聞2016年4月5日ヘルスケア面