ヒビノ、新たな没入体験を提供 来年春からシステム貸出開始へ
移動興行、演者・3D・AR融合
バーチャルとリアルの融合で没入型体験を提供―。ヒビノは大型発光ダイオード(LED)ディスプレーと先端技術をかけ合わせた研究開発拠点を東京都港区に開設した。3次元(3D)LED技術を活用し、新たな演出手法や没入型体験の研究開発を進める。2024年春にはLEDディスプレー・システムのレンタルを開始。従来得意とするコンサートやイベントに加え、移動型興行などで没入体験を提供し、同システムの普及につなげる。(高島里沙)
新拠点の「Hibino Immersive Entertainment Lab(ヒビノイマーシブエンターテインメントラボ)」に、幅21・6メートル、高さ3・6メートルの大型LEDディスプレー・システムを設置した。画面の前にダンサーなどの演者や美術セットを配置し、現実と3次元(3D)コンピューターグラフィックス(CG)や拡張現実(AR)を融合することによって没入感のある演出を可能にする。ヒビノの芋川淳一取締役常務執行役員は「演者の前方に映像を写し出せるなど、効果的な表現ができる」とアピールする。
ディスプレーは、8月に資本業務提携契約や技術ライセンス契約を結んだ米リミナルスペース製を使用する。同社の3DLED技術は、独自の偏光フィルターをLEDディスプレーに施工し、専用の3Dグラスを通して見ることで3D効果を体感できる仕組み。140度の広い視野角に高画質と3D効果を提供する。
またフリッカー(ちらつき)やジャダー(ブレ)は発生しにくいため、3D酔いを誘発しない。プロジェクターで投影するプロジェクションマッピングでは影が映り込むのに対して、LED技術は「ディスプレー自体が発光するため、よりバーチャルとリアルを融合しやすい」(芋川取締役常務執行役員)特徴もある。
ヒビノは日本・アジアで初となるLEDディスプレー・システムのレンタル運用を24年春に始める。得意とする大型映像・バーチャル技術に、リミナルスペースの3DLED技術を融合。企業のプレゼンテーションや展示会、コンサート、スポーツイベントといった既存領域の深耕を図る。加えてテーマパークや商業施設、イベントホールなどで仮設や期間限定の常設で提供される移動型の興行「ロケーションベースエンターテインメント」の拡大を目指す。
欧米では既にリミナルスペースの提携先を通じて、人気アーティストのアルバム発表会やハリウッド映画の公開を記念した没入型の体験会などで活用されている。映画やドラマの世界観も再現しやすいという。
レンタル運用にかかる料金は期間や内容に応じた個別見積もり。1000人規模の会場にも対応できる180平方メートルサイズを貸し出す。レンタル期間は1週間から3年までニーズに合わせて対応する。芋川取締役常務執行役員は「短期イベントを実施して、初年度は知名度の向上を図りたい」と語る。