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日産が米国生産のEV車種を倍増させる背景事情

「インフレ抑制法」対策に乗り出す
日産が米国生産のEV車種を倍増させる背景事情

EV対応を進めるキャントン工場

日産自動車は2026年から米国で新型電気自動車(EV)4車種を生産する。これまでミシシッピ州の工場で新型EV2車種を生産するとしていたが、2倍に増やす。EV向け電池では現在、米国で調達しているエンビジョンAESC(神奈川県座間市)以外の調達先を検討する。中国企業が80%出資する同社の電池を採用した場合、米国で8月に成立した「インフレ抑制法」で税制優遇を受けられない懸念があり、対策に乗り出す。

日産は26年から順次、キャントン工場(ミシシッピ州)で高級車ブランド「インフィニティ」を含め新型EV4車種を生産する。スポーツ多目的車(SUV)などが対象と見られる。同工場では5億ドル(約680億円)を投じ、25年に新型EV2車種の生産を予定すると2月に発表していたが、品ぞろえを増やして強化する。

搭載する電池では中国のエンビジョングループが80%、日産が20%出資するエンビジョンAESC以外からの調達を検討する。インフレ抑制法ではEV購入者に最大7500ドルの税額控除が設けられた。

ただ、対象のEVに搭載する電池に、中国を含む「懸念される外国の事業体」が関与する場合、税控除の対象外となる可能性があり、AESCがその事業体に該当する恐れが指摘されている。

しかし同制度を運用するためのガイダンスの作成はこれからで、AESC製電池を搭載したEVが税制優遇の対象を外れると決まった訳ではない。日産は調達先をAESCに絞らず選択肢を広げて検討することで、不透明な先行きに備える。

バイデン大統領は30年までに米国で新車販売の50%以上をEVなどの電動車にする大統領令にも署名し、EVシフトを後押しする。日産は30年度までに米国で新車販売の40%以上をEVにする目標を設定。品ぞろえの拡充、生産体制の整備、電池の安定調達を含めたサプライチェーン(供給網)の構築などで目標の達成につなげる。


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日刊工業新聞 2022年12月07日

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