スマホ失速で明暗、村田製作所など電子部品8社の業績の全容
電子部品大手の業績が明暗を分けている。中国・上海のロックダウン(都市封鎖)終了後、自動車向けの需要が緩やかに回復し車載用比率が高い会社ほど円安の恩恵を受けた。TDK、アルプスアルパイン、オムロンが2023年3月期の連結営業利益予想を引き上げた。一方、スマートフォンなど民生機器の需要は失速。民生機器比率が高い村田製作所は23年3月期の連結営業利益見通しを下方修正した。
TDKは積層セラミックコンデンサー(MLCC)の工場稼働率について「フル生産が継続。製品ミックスの効果もあり収益性が大きく向上している」(齋藤昇社長)。TDKの受動部品は7割以上が自動車・産業機械向け。同社は23年のEVを含む環境対応車(xEV)の世界市場の予想を5月公表値より52%引き上げた。
材料市況のピークアウトもプラスに働く。TDKは市況変動を製品価格に反映しやすくするサーチャージ制をリチウム二次電池で採用しており「上期は製品価格が上がる一方、材料市況の上昇が一服したため利ざやが拡大した」(山西哲司専務執行役員)。
足元の電子部品需要のけん引役は自動車や社会インフラ関連だ。京セラの谷本秀夫社長も「産業機械市場・自動車市場中心にタンタルコンデンサーなどコンデンサー類の需要が増加した」と話す。
民生機器比率の高い企業ほど逆風を受ける。「主に中華圏向けのミドルからローエンドのスマホが落ち込んでいる。巣ごもり需要の一巡でノートパソコンの出荷台数も減少」と村田製作所の村田恒夫会長は説明する。
中国の景気減速や第5世代通信(5G)搭載機種の普及に伴う買い換え需要の一服などを背景に中華系スマホはハイエンドを除き苦戦。村田製作所は22年3月期に売上高の4割以上をスマホなど通信向けの電子部品が占め影響が大きい。京セラもスマホ向けに供給するが、主にハイエンド機種向け。市況悪化の影響が比較的少なかったようだ。
村田製作所はスマホ需要について「来期からの回復」(村田会長)とみる。23年3月期の世界のスマホ需要予測を4月時点から約2割引き下げた。主力のMLCCの工場稼働率は7―9月期で85―90%で下期も同水準を継続する。23年3月期は工場稼働率に連動する操業度が前期比1440億円の損失となる。
上方修正した企業も楽観していない。TDKはハードディスクドライブ(HDD)の内蔵部品である磁気ヘッドが「7―9月以降、急速に減少しており工場稼働も落ちる」(山西専務)。リチウム電池も「価格(下押し)プレッシャーが生じる」(同)とみる。
民生機器の底入れは早くて23年4―9月期との見方が市場で広がる。回復時期次第で踏みこんだ生産調整が必要になりそう。23年3月期業績見通しを上方修正した企業も来期は円安効果のはく落が予想される。また自動車向けで追加発生する開発費用を顧客とどう負担するかの交渉など新たな課題もある。
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