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北海道新幹線「青函トンネル」時速200キロへの挑戦

立ちはだかる「貨物との両立」という壁
北海道新幹線「青函トンネル」時速200キロへの挑戦

開業から30年を迎えた青函トンネルは北海道新幹線の札幌延伸に向けて高速化が待望される(JR東日本の検測車両「East i」)

今月13日で開業から30周年を迎えた青函トンネル(全長53・85キロメートル)。多くの旅客や貨物を運ぶ海底“大動脈”は、交流創出や生活を支える役割を担ってきた。2016年春の北海道新幹線開業によって高速化と貨物輸送の両立という問題に直面している。

 北海道新幹線の30年度末の札幌延伸に向けて、青函トンネルは高速化が待望される。現在は、すれ違い時の風圧で貨物列車に荷崩れが起きないよう、最高時速が140キロメートルに制限されているためだ。

 国土交通省は17年12月、北海道新幹線の速達性向上を狙いに、19年春のダイヤ改正に合わせて青函トンネル内の最高時速を160キロに引き上げる方針を決めた。

 東京から新函館北斗までの到達時間は現在の最速4時間2分から約3分の短縮を見込み、心理的効果が大きいとされる3時間台が視野に入る。

 20年度には連休など多客期に限定して、貨物列車が走らない時間を設けて下り線の時速200キロ運転を検討する。18年度には新幹線走行前に軌道上の安全を確かめる確認車の開発も準備する計画だ。

 JR貨物の田村修二社長は「(貨物と新幹線が)どう共存するかが課題だ」と、けん制する。貨物列車の本数は新幹線の約2倍。北海道からは農産物、本州からは日用品など、年500万トンの荷物がトンネルを通過する。

 北海道新幹線は開業1年目の利用者が229万人で開業前の1・6倍、平均乗車率は32%だった。今年は開業効果の反動減に悩む。打開策は観光誘客の強化だ。

 JR北海道の島田修社長は「道南と東北を結びつける」として、青森でのイベント時に不足する宿泊先の受け皿を訴求する。

 JR東日本の冨田哲郎社長は「インバウンド(訪日外国人客)の流動をどう造るか。北海道と東北一体で売り出す」と話す。

 北海道には、青函トンネルを走行して豪華周遊列車「トランスイート四季島」も乗り入れる。首都圏から北海道への送客拡大に向けて、JR東の果たす役割は大きい。
日刊工業新聞2018年3月13日の記事を加筆・修正
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
一方で青函トンネルは開業から年月がたち機能維持や延命化も大きな課題となっている。トンネル内は湿度が高く、塩水が浸入する海底下という過酷な環境にあるため、設備の劣化速度が速い。作業のために掘削した先進導坑などでは、建設から40年を経過した場所もあり「盤ぶくれ」と呼ぶ路盤の隆起などの変状も発生している。今後も設備更新や対策工事を通じて安定した人流、物流機能の確保が欠かせない。 (日刊工業新聞第二産業部・小林広幸)

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