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【ディープテックを追え】自動と自律のハイブリッドロボットで物流現場の課題解決

#58 LexxPluss

倉庫内を走り、人に代わって物や部品を運ぶ搬送用ロボットは国内の人手不足もあり導入が進む。特にコロナ禍で電子商取引(EC)が進んだことで、物流現場の自動化が急務だ。LexxPluss(レックスプラス、川崎市幸区)は「ハイブリッド型」の搬送ロボットを開発し、自動化ニーズを掘り起こす。

「自動運転技術」で物流の課題解決

「物流業界の課題を解決するために使われるロボットでないとダメだ」-。レックスプラスの阿蘓将也最高経営責任者(CEO)はこう強調する。

阿蘓CEOは元々、独自動車部品大手のボッシュで自動運転に携わってきた。大規模駐車場において車が自動で空スペースに駐車する「自動バレーパーキング」の開発を手がけた。自動バレーパーキングは特定のエリアにおいて人の監視なしに運転操作を行う「レベル4」の自動運転技術のこと。

阿蘓CEO

ボッシュ在籍時、最後に手がけた仕事が物流車両の自動運転プロジェクトだ。ただ、実際の物流車両が走るのは公道。そのため必要な技術的難易度や研究開発費は跳ね上がる。そこで目をつけたのが倉庫だ。実証を重ねながら、ラストワンマイルにおける自動運転よりも、「明日の業務をどうするか」に悩む倉庫の課題が深刻に見えたからだ。特に倉庫の搬入、搬出業務は荷物の数によってオペレーションが変わるため、どうしても人の力に頼らざるを得ない。阿蘓CEOは「課題は大きいが、技術を組み合わせれば解決できる。またスタートアップが参入しても勝負できる市場の大きさも感じた」と当時を振り返る。

AGVとAMRのハイブリッド搬送ロボット

物流業者の多くは自動化ソリューションを導入できずにいる。原因は荷物と人が共存する空間で、活動できるロボットが少なかったためだ。この課題をレックスプラスは自動運転技術を応用した搬送ロボットで解決を目指す。

同社が開発するのは縦70センチメートル、横60センチメートル、高さ24センチメートルのロボット。重さ300キログラムの積載と500キログラムまで牽引できる。パレットや棚などさまざまな搬入、搬出業務に対応できる。最も特徴的なのは同じルートを反復的に走る小型無人搬送車(AGV)と障害物をよけながら走る自律移動ロボット(AMR)の機能をハイブリッドに備えている点だ。

人と荷物が共存する空間で、AGVを走らせるための誘導線を張り巡らせるとメンテナンス性に劣る。AMRのように自律走行で搬送するロボットはオペレーションの変更を最小限にとどめられるため、運用がしやすい。ただ障害物をよける関係上、AMRでは「何秒間に何個の荷物を運ぶ」といったタイトな要求には答えられない。同社はAGVの軌道走行でタイトな要求に応えられるようにしつつ、それ以外の場合は自律走行させる。これにより物流量に関わらず発生する業務はAGVで対応し、業務間の移動や需要変動の大きい業務はAMRというように、臨機応戦な運用ができるようになった。阿蘓CEOは「異なる現場環境に幅広く対応できる」と話す。

機能的に別々であるAGVとAMRを両立させるカギはソフトウエアだ。通常のAGVは磁気テープを読み取るため、ルート外に行くとそこで動きを止めてしまう。同社のAGVモードは、コードを印刷したテープを読み取り走行する。その情報をソフトウエアで制御することで多様な動きを実現する。また、軌道走行なのか自律走行なのかを自動で見極め走る。

現場で使う人がタブレット端末などを用いて、あらかじめ決めておいた地点を選択することで走行ルートを指示できる。ロボットは電池で稼働し、自動で拠点に戻り充電する機能も備えている。

定額製モデルで費用を抑える

通常AMRはAGVに比べて導入コストがかさむが、同社はRaaS(サービスとしてのロボット)で導入する。ロボットの販売コストを機体の製造原価に抑えることで浸透を図る。導入後もソフトウエアの改修を通じて、機能を向上する。サブスクリプション(定額制)モデルにすることで導入企業は初期費用を少なく導入でき、同社は機能拡充を通じた収益を得る。倉庫新設をきっかけに自動化へ取り組みたいというニーズの取り込みを狙う。

すでに量産を開始し、22年からサービスの販売を始めた。本年度は60台ほどの受注を見込む。今後は国内での知見を生かし、米国やヨーロッパでの展開を目指す。ハードの設計などをオープンにして、製造や物流企業のパートナーを広く募集する。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
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小林健人
小林健人 KobayashiKento デジタルメディア局DX編集部 記者
物流倉庫へのロボット導入は海外が先行する形で進んでいます。目立つのは人とロボットのエリアを区切るものです。AMRはそのほかのスタートアップも開発を進めています。AGVでの運用もできることから、工場向けへの適用もできそうです。普及がどこまで進むかが重要なポイントです。

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