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産業用ロボット設置台数は10年で倍増、「中国」「半導体」市場を狙う日本メーカーの戦略

国際ロボット連盟(IFR)は2024年に世界の産業用ロボットの年間設置台数が50万台を超える見通しを明らかにした。世界経済や企業の設備投資に左右される面もあるが、製造業の喫緊の課題である生産性向上や労働人口減少に対応する手段として産ロボの継続的な需要を見込む。市場をけん引するのはファナック安川電機などの日本メーカー。供給体制の整備に加え、利用領域の拡大やさらなる使いやすさを追求する。(川口拓洋)

IFRの予測によると15年に25万4000台だった年間設置台数は約10年で倍増する計算だ。需要をけん引するのはアジア。中国や日本、韓国は世界トップクラスの産業用ロボット利用国であり、20年の設置台数はアジアが全体の71%を占める。中でも中国の利用が突出しており、20年は16万8000台を設置し、総稼働台数は94万3000台に上る。21年には100万台を超える見込みだ。

直近で需要が急拡大するのが半導体製造装置向けの搬送用ロボットだ。安川電機取締役常務執行役員の小川昌寛ロボット事業部長は「搬送用ロボットの生産を現状の想定水準から引き上げる必要がある。2倍になるかもしれない」という。同ロボットで高シェアを握る川崎重工業は21年4―9月期決算で「世界的な半導体の不足解消に向け、搬送ロボットの需要が拡大している」(山本克也副社長)ことが業績の押し上げ要因になった。

ロボットの使用領域が拡大している点も見逃せない。ファナックはバッテリーの搬送など自動車の電動化工程に最適な大型ハンドリングロボット「M―1000iA」を投入した。コンパクトな場所で数百キログラムのバッテリーを車体に組み付ける工程を担う。

不二越は独自アルゴリズムを採用した新視覚制御技術を開発し、電機・電子分野におけるケーブル挿入作業を自動化する用途の展開を始めた。安川電機は食品衛生の水準を確保した食品加工用途向け小型ロボット「モートマン―GP8」を投入する。これまで自動化できなかった工程や新規領域を産業用ロボットが担い始めている。

脱炭素に向け、環境対応も進む。オムロンの寺山昇志ロボット推進プロジェクト本部長は「回生エネルギーの利用や軽量化などの取り組みを広く伝える必要がある」とみる。

需要は堅調に広がるが、足元では半導体や電子部品、樹脂など部材不足の影響により産業用ロボットの製造・出荷に影響が出ている。安川電機の小笠原浩社長は「材料費の高騰や半導体不足により増産にかじを切れない」と販売機会損失の恐れを口にする。

とはいえ人手不足や生産性向上など社会課題解決に向けたニーズは広がる一方だ。「ロボットの生産能力は月産1万1000台を2割増にするめどは立っている。遠くない将来に次の投資も必要になる」とファナックの山口賢治社長。各社とも水面下で次の一手に着手している。


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日刊工業新聞2021年11月17日

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