ロボット活用で多品種搬送を実現した大成建設の受注戦略
大成建設は、ロボットを活用したシステムの提供を武器に建設受注の拡大を目指す。物流倉庫やデータセンター、半導体関連施設の建設需要が旺盛な一方、建物だけでは競合他社との差別化が難しくなっている。ロボット利用で建物の付加価値を高めるサービスを提供し、顧客とのビジネス関係を深化させている。(編集委員・山下哲二)
大成建設が名港海運と開発した「多品種荷姿搬送システム」は、倉庫に保管した荷物をトラックに積み込むまでの搬送システム。フリーローラーと搬送ロボット台車を活用しサイズの異なる荷物の出荷作業を自動化した。
事前に出荷情報を読み込ませたバーコード、2次元コード「QRコード」を添付した荷物を、搬送ロボット台車が読み取り、フリーローラーで自動搬送する仕組み。独自開発の搬送ロボット台車1台で1ラインの荷物を自動搬送できるようになり、荷物の間隔が縮まり倉庫の省スペース化も実現した。
同社エンジニアリング本部自動化プロジェクト室長の小野剛氏は、開発のきっかけについて「顧客から自動化の取り組みの要請があった」と明かす。
倉庫や工場の出荷では、トラックへの積載前に車両の大きさや荷物の積み込み方向に合わせ、フォークリフトで荷物を集めて準備する揃え作業を行う。それに向けた搬送作業は、1ラインに複数の駆動モーター付きコンベヤーをつなげ、荷物をトラックに積み込むのが一般的。
ただ、商品の少量多品種化に伴いサイズの異なる荷物もあるため、最も大型の荷物に合わせたコンベヤーを小型の荷物を想定した数だけ設置するケースが多い。小型荷物のラインでは荷物間に余分なスペースが生じてしまう。
倉庫は仮置きや保管のスペースが大きいほど倉庫の価値が向上する。多品種荷姿搬送システムにより荷物の搬送を効率化し、限られた倉庫のスペースを有効活用できるようにし、建物の価値も高めた。フォークリフトで運ぶ距離も短くなり、積み込み時間が短縮しトラック運転手の負担も軽減した。
また、1ラインの搬送がロボット1台になり、設備の導入コストは大幅に低減した。重量2・5トンの荷物を最大12個搬送する場合、従来のコンベヤー式に比べて導入費用は約50%削減できたという。
開発までの最大の課題は、メーカーを納得させて搬送ロボット台車を開発することだった。「(摸擬的に)レーンで搬送ロボット台車を動かし、見てもって説得した」(小野氏)という。
ネット通販の普及拡大や、デジタル化を背景に商品の少量多品種化が進み、物流倉庫や半導体関連の建設需要が急増している。倉庫は、ビルなどに比べて簡素であり短工期で売り上げにつながる一方、利益率は低い傾向がある。従来、建設業界でロボットは建設作業の省人化を目的とするツールだった。さらに建物の付加価値を高める重要なツールとしても注目されている。