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【ディープテックを追え】「カーナビ」で事故防止。スタートアップが挑む

#57 ピレニー

完全な自動運転技術の実用化。その目的の一つが交通事故の削減だ。ただその道のりは半ばだ。自動車メーカー各社は、高度な運転支援を行う先進運転支援システム(ADAS)や衝突回避支援などを備えることで課題解決を目指している。

それでもコンピューターによる自動車制御だけでは防げない事故があるのも事実だ。ピレニー(東京都千代田区)は後付けできるカーナビゲーション型のドライブアシスタントシステムを開発。人の認知機能を補完する機器で交通事故の減少を目指す。

運転者に危険を通知

製品イメージ

同社の「Pyrenee Drive(ピレニードライブ)」は人の操作ミスを察知することで交通事故を防ぐ製品だ。視野角100度をカバーするカメラで運転席から見える歩行者や他の車を認識。搭載した人工知能(AI)が対象の次の行動を予想し、事故の危険性を音声でドライバーに知らせる。

ピレニーが人の操作に介入する製品を作る理由は事故原因にある。警視庁が調べた2020年の交通死亡事故発生件数を法令違反別に見ると、漫然運転や脇見運転などのヒューマンエラーに起因するものが多くを占める。同社は事故の原因になる人間の認知機能をAIで補完することで、交通事故を削減できるとにらむ。三野龍太最高経営責任者(CEO)は「人の認知能力を集中して維持し続けるのは難しい。人とAIが協同することで事故を減らしたい」と意気込む。

三野CEO

カーナビからの切り替えを狙う

自動運転と同様に、物体を認識し危険を察知するには膨大な計算力が必要だ。また物体が絶えず動き続ける道路上においてはクラウドコンピューターではなく、機器側の計算力が必要になる。同製品は小型の画像処理半導体(GPU)を用いて、物体認識と行動予測できるAIソフトウエアを搭載。そうすることで小型でありながら、物体が動き続ける道路上で使えるドライブアシスタントシステムを実現した。危険察知をAIで知らせ、運転は人が行う「協同」を想定する。

歩行者や車を認識するイメージ

危険察知は機器側のGPUで行うが、撮影した映像をクラウド上で分析しAIを追加学習する。ユーザーが増えるごとにモデルの性能が向上する仕組みだ。自家用車と商用車のどちらにも搭載できる。使用用途に合わせてソフトウエアを切り替えることで対応する。またドライブアシスタント機能のほか、ドライブレコーダーやカーナビ、音楽再生などを行えるようにする。既存のカーナビからの切り替えによる普及を狙う。

発売は23年を予定。機器の買い切りモデルのほかに、機器の価格を抑えながら導入できるSaaS(サービスとしてのソフトウエア)モデルでの拡販も計画する。課題は機器が熱や振動に耐えられる設計にすることだ。シャープと提携し改善に取り組んでいる。販売までに悪天候の運転データを収集し、AIの性能向上も行う。SBSロジコム(東京都新宿区)とも性能向上で提携。SBSロジコムの運転業務のデータを開発に生かすほか、試作機を業務車両に搭載する。運転手の走行データなどを分析して安全運転に寄与したい考えだ。三野CEOは「(同製品が)運転手を監視するものではなく、危険を防止してくれるパートナーだと思ってもらえるように機能の拡充に取り組む」と展望を話す。

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ニュースイッチオリジナル
小林健人
小林健人 KobayashiKento 第一産業部 記者
ハード系のスタートアップにおける製品化の難しさを感じます。生産ノウハウを持ったパートナーとの設計段階からの連携なくして、難しいのかなと。むしろこの部分において、オープンイノベーションで進んでいくことが重要だと感じます。

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