【連載#2】CO2ゼロ宣言する欧米企業との差、日本の地位低下に危機感

脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略(2)

 「日本企業の存在感はないに等しかった」。2015年末、気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)開催地のフランス・パリにいたリコーの加藤茂夫執行役員は当時を思い出す。先進国と途上国が対立を乗り越え、COP21でパリ協定ができた。“歴史的合意”とまで言われたが、会場に日本企業関係者の姿は少なかった。

 リコーは環境問題に取り組む企業姿勢が評価され、国連と仏政府からCOP21の文書印刷を任されていた。現地に詰めていた加藤執行役員はサイドイベントに欧米企業トップが次々と登場し、「脱炭素にすべきだ」と訴える姿を目撃した。日本では二酸化炭素(CO2)排出削減量をいくらにするか議論しても、CO2ゼロの「脱炭素」は想定外だった。

 加藤執行役員は帰国後、パリで体感した衝撃を経営陣に報告。17年4月、リコーも50年までにCO2排出をゼロにすると宣言した。同時に電気全量の再生可能エネルギー化を目指す企業連合「RE100」にも加わった。14年発足のRE100には米アップル、米グーグルなど90社が加盟していた。日本からはリコーが1社目で、日本企業の出遅れは明らかだった。

 そんな日本勢を一変させたのが17年11月、ドイツ・ボンでのCOP23だ。非政府組織(NGO)が石炭火力発電の廃止を各国政府に迫り、カナダや英国などが脱石炭連盟を発足。石炭火力を増設する日本は世界から批判を浴びた。現地にいた積水ハウスの石田建一常務執行役員は「日本が環境後進国と言われるのは悔しい」と語っていた。

 加藤執行役員も石田常務執行役員、イオンの三宅香執行役などとCOP23を訪ねた。その模様が報道されたこともあり、加藤執行役員には他社から面談が殺到し、「どうしたら脱炭素宣言できるのか」と質問攻めにあった。環境分野での日本の地位低下を知り、企業に危機感が広がった。

 リコーや積水ハウスなどが参加する連携組織「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」の説明会にも100社が詰めかけた。この組織は09年、気候変動対策への政策提言などを目指して発足。10社前後が続いていた会員数は、賛助会員を含め80社まで膨らんだ。

 富士通、NEC、パナソニックも脱炭素を宣言し、RE100加盟の日本企業も12社に増えた。「ものすごいステップアップした」(加藤執行役員)。COP21から間もなく3年、日本でも脱炭素経営の機運が醸成されてきた。

連載「脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略」


【1】日本企業のCO2排出ゼロ宣言が増加、環境先進企業の新たな条件に
【2】CO2ゼロ宣言する欧米企業との差、日本の地位低下に危機感
【番外編】ソニー・平井会長、脱炭素への決意語る
【3】「再生エネ買えない」で、外資企業が日本から撤退
【4】アップルが社名公表、再生エネ利用が取引条件になる日
【5】国内電力の1%、イオンとNTTが再生エネ市場を刺激する!
【6】世界1位のゼロエネ住宅「政府より先に」で商機
【7】リコーが開発した“常識外れ”の水車の挑戦
【8】サプライヤーに省エネ“勘所”伝授、自社の成長近道に
【番外編】《2075年》CO2排出量ゼロ実現に必要な日本の3つの技術
【9】環境事業のお金を回す債券「グリーンボンド」とは?

日刊工業新聞 2018年10月2日

松木 喬

松木 喬
10月03日
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COP21直前まで、欧米企業が会場(サイドイベント)で発言しているとは知りませんでした。それまでは国同士の交渉に注目していて、当時もオバマさんがどんなスピーチをするのかに関心を持っていました。振り返ってみるとパリ会場に(数人でも)日本企業関係者がいたおかげで、欧米企業の動向が理解できるようになった気がします。

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