【連載#5】国内電力の1%、イオンとNTTが再生エネ市場を刺激する!

脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略(5)

 イオンは3月、2050年までに店舗運営の二酸化炭素(CO2)排出ゼロを目指す“脱炭素宣言”をした。同社の三宅香執行役は事前の社内会議で「ゼロでないといけないのか」と異論が出たと明かす。最後は「グローバルで名を上げたいなら、グローバル企業と同じにしないと」と説得し、合意を得た。

 脱炭素に向け、まずは中間目標となる30年のCO2排出35%減(10年比)がターゲットだ。18年は1年をかけグループ300社の省エネ対策の進捗(しんちょく)を分析し、計画を練って19年から実行に移す。人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)の活用、環境事業に使う債券「グリーンボンド」の発行も検討する。

 イオンは事業で使う電気全量を再生可能エネルギー化する国際組織「RE100」にも加盟した。「日本の再生エネ市場は小さく、買いたくても買えない。イオンが宣言し、再生エネの需要があることを世の中に発信したかった」(三宅執行役)と語る。イオンが使う電気は日本の消費電力の1%に相当しており、この発言は電力市場に刺激となる。「いまの商用電力と同じ価格ならすぐに買いたい」(同)とも訴える。

 こうした市場からの要望を受けてNTTファシリティーズは7月、商用電力と同等価格で再生エネを供給する事業を始めた。固定価格買い取り制度(FIT)を使わず、発電した再生エネを直接、契約者に売る。

 日本の再生エネは高コストで、FITなしでは成り立たないのが常識だ。同社は自社所有90件以上、顧客1330件以上の太陽光発電設備の設置に携わった知見から低価格化できるという。NTTファシリティーズ中央スマートエネルギー部の平形直人担当課長は「RE100参加企業からの引き合いがある」と手応えを話す。

 NTTグループも日本の電力の1%を消費しており、CO2削減は同社の社会的責任だ。再生エネ電気の直販は市場ニーズと合致してビジネス機会となり、再生エネ普及による社会全体のCO2削減にも貢献できる。

 スマートエネルギー部の名倉将司担当課長は9月、米ニューヨークであった気候変動対策強化を訴えるイベントに参加した。「海外企業は経営として本気で脱炭素に取り組んでいた。日本でも再生エネの必要性が高まると再認識した」と語り、再生エネのニーズをあらためて実感する。再生エネを求める側、売る側のベクトルが合うと日本の再生エネ市場も活性化する。

連載「脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略」


【1】日本企業のCO2排出ゼロ宣言が増加、環境先進企業の新たな条件に
【2】CO2ゼロ宣言する欧米企業との差、日本の地位低下に危機感
【番外編】ソニー・平井会長、脱炭素への決意語る
【3】「再生エネ買えない」で、外資企業が日本から撤退
【4】アップルが社名公表、再生エネ利用が取引条件になる日
【5】国内電力の1%、イオンとNTTが再生エネ市場を刺激する!
【6】世界1位のゼロエネ住宅「政府より先に」で商機(11月7日公開予定)

日刊工業新聞 2018年10月30日

松木 喬

松木 喬
10月31日
この記事のファシリテーター

イオン、NTTグループとも日本の消費電力の1%を使う企業同士。そしてイオンは買うことで再生エネ市場拡大に貢献、NTTグループのNTTファシリティーズは売ることで普及に貢献したいという思いの一致。この効果に期待です。ちなみにFITを使った電気は発電所などが不明なため、RE100のルールでは再生エネにはなりません。

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