ゼロエネよりスゴイ!福岡の中小企業がCO2ゼロ住宅を実現

【連載#10】脱炭素経営 パリ協定時代の成長戦略

エコワークスの住宅。国の施策に先駆けて省エネ住宅を開発

 九州のハウスメーカー、エコワークス(福岡市博多区)の小山貴史社長にとって、2007年に聴講した東京大学のシンポジウムが転機だった。04年に父親の会社から独立して起業し、当時は室内に漂う化学物質が原因となるシックハウス症候群を起こさない住宅の普及に取り組んでいた。  シンポジウムは国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が出した第四次報告書がテーマ。報告書は温暖化の原因が人間活動である可能性が高く、21世紀末の気温が産業革命前から6度C上昇すると予測。科学者は「今、行動すれば子どもたちと人類の未来を守れる」と訴えた。  小山社長は行動を起こしたい衝動に駆られ、省エネルギー住宅の開発に没頭する。国の研究・実証事業に何度も応募した。経営者として事業チャンスも感じた。現在54歳の小山社長は中学生の頃から新聞を愛読し「先を読むマーケティングがないと事業は成り立たない」と理解していた。相次いだ大企業の破綻に衝撃を受け、社会変革に先回りする必要性を痛感し「省エネ住宅は未来のお客さまのニーズに応えられる」と信念を強くした。  国の事業に手を挙げるだけでなく、政府の環境関連の審議会の議事録すべてにも目を通すうち、いずれ住宅に高い省エネ性が求められると確信していた。実際に国は14年、エネルギー消費が実質ゼロになるゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)を標準化する方針を決めた。エコワークスは12年、ZEHの上をいく、二酸化炭素(CO2)排出実質ゼロの「LCCM住宅」で最上位の認証を全国で初めて取得した。  従業員70人ほどの同社が同業他社に先駆けて開発できた理由について、小山社長は「大手と伍(ご)して戦える優秀な人材が集まっているから」と説明する。応募書類に環境問題解決への思いが書かれているなど、理念を共有できる人材を採用している。「環境」を前面に出すことで優秀な学生を獲得できているという。  同社の年間販売は06年ごろ20棟台だったが、今は70棟台となった。中小企業も温暖化問題解決に取り組むと優秀な人材を確保でき、製品開発で先行して商機を獲得できる。  小山社長は15年末、パリ協定が採択された気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)の会場を訪ねた。CO2ゼロの脱炭素を求める海外企業を見て「想像以上に世の中が変化する」と実感し、環境優先の経営を貫く意思を強くした。

続きを読む

関連する記事はこちら

特集