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デジタルモデル活用における「日本の遅れ」の原因とは

おすすめ本の抜粋「バーチャル・エンジニアリング Part4 日本のモノづくりに欠落している“企業戦略としてのCAE”」 #3

形状のデジタルモデル、機能パフォーマンスのデジタルモデル、デジタル化された制御アルゴリズムの連携したデジタルモデルがバーチャル(ほぼ現実の)モデルとなる。このバーチャルモデルは制御コントロールされ、形状の持つ原理原則に従ったパフォーマンス挙動を示すことができる。すなわち、最終製造モジュールそのものとなる。
 このため、バーチャルモデルは新たに情報を持った3D図面と解釈できるが、従来と変わったことは、その図面そのものがビジネス取引の対象となったことである。その図面の中にCAE解析結果であるデジタル情報が含まれ、CAE解析内容が製品の機能パフォーマンスとしてビジネス対象の価値を持つことになった。

2005年頃からCAE技術がビジネスのキーになった

このようなデジタルで表現したモジュールの3Dモデルとシミュレーションモデルが前述したように2005年頃から、すでに欧州ではサプライヤーと自動車会社、メガサプライヤー間での納入物件の1つになっていた。そのモデルとI/F(インターフェース)の標準化が早い時期から進められていたことがわかる。データフォーマットやI/Fの標準化、開発プラットフォームの提供、大学での新たな教育講座の新設、国際標準化機構(ISO)・日本規格協会(IEC)の整備など、社会インフラの変革も含めた新たな対応が進められてきた。その中でも、CAEの活用、普及が変化してきた。半世紀以上におよぶCAE技術の進展と普及が製造業のビジネス変革のキーとなり、大きく進んでいる。

日本のバーチャルモデルと展開状況

表を見て頂きたい。形状のデジタルモデル、機能パフォーマンスのデジタルモデル、デジタル化された制御アルゴリズムの連携したモデルがバーチャルモデルであるが、日本ではそれらのデジタルモデルとの連携がほとんどなく、バーチャルモデルが成立していない。

3D設計が遅れていることも理由の一つではあるが、設計仕様の検討としてのCAE解析の活用が進んでいない。日本のCAE解析の目的が欧州、北米の設計仕様の検討、機能のデジタル化などの動きと違い、新たな部品やモジュールの現象解明の解析技術構築を中心とした展開が多いように思われる。このため、既存の他のモジュールなどとの未連携の単体解析のみの動きが多い。

また、3D設計が遅れていることからか、制御設計との連携もほとんどない状態と言える。3D設計の遅れは、形状のデジタル化だけでなく、機能のデジタル化、制御設計との連携も行われず、バーチャルモデルが存在していないのが日本の現状となる。現在の状況はCAE、3D設計などの技術活用の遅れだけでなく、バーチャルモデルを用いたビジネス基盤自体が存在していないと言える。すなわち、世界の商取引、製造業ビジネスへの参加が不可能な状況とも言えるのだ。
(「バーチャル・エンジニアリング Part4 日本のモノづくりに欠落している“企業戦略としてのCAE”」p.35-p.37より一部編集して抜粋)

<販売サイト>
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<書籍紹介>
書名:バーチャル・エンジニアリング Part4 日本のモノづくりに欠落している“企業戦略としてのCAE”
著者名:内田孝尚・栗崎彰
判型:四六判
総頁数:228頁
税込み価格:1,980円

<目次(一部抜粋)>
序章 ほぼ完了した設計変革
第一部 モノづくりビジネスのコアとして動き出したCAE
第一章 シミュレーション活用に関して日本で知られていないこと
第二章 問われる設計の役割
第三章 バーチャルモデルが中心となるビジネス基盤構築バーチャルモデルがビジネスに
第四章 CAE/CAD/CAM連携の大きなポテンシャル
第五章 バーチャルモデル環境の成立に必要なこと
第二部 設計のためのCAEの現状とこれからの施策
第六章 設計のためのCAEの現状
第七章 CAEの位置付けと状況の変化を捉える
第八章 CAEの現場をアップデートせよ
第九章 CAEの最大活用、データドリブン型のCAEに向けて

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日本のモノづくりに欠落している“企業戦略としてのCAE”
日本のモノづくりに欠落している“企業戦略としてのCAE”
製造業において取引の中心であったリアル商品の代わりとして、バーチャルモデルが取引の対象となり、普及している。そのバーチャルモデルの機能パフォーマンスは、原理原則の理論に従ったCAE(コンピューター利用解析)を用いてデジタル表現されている。このバーチャル商品が、世界ではビジネスのコアになりつつある。
 日本では3D設計の普及が遅れており、バーチャル商品の流通とビジネス展開も歩みは遅い。この危機的な実態を鳥瞰(ちょうかん)し、日本の進むべき方向を解説した書籍『バーチャル・エンジニアリングPart4 日本のモノづくりに欠落している〝企業戦略としてのCAE〞」より一部抜粋し、掲載する。

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