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「ルールからの解放」…未然防止ツール「DRBFM」の特徴

おすすめ本の抜粋「事例でナットク! DRBFMによる正しい設計プロセスの実行とGD&T(公差設計と幾何公差)で問題解決」
「ルールからの解放」…未然防止ツール「DRBFM」の特徴

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未然防止ツールの役割の変化

自動車部品産業のISO9001 セクター規格であるISO/TS16949 においても、コアツールとしてFMEA(Failure Mode & Effects Analysis、故障モードと影響度解析)が要求されている。未然防止の活動は、世界標準のルールの基に標準のツール(FMEA)を使用して行ってさえいれば、未然防止活動の内容自体があまり問題視はされなかったような気がする。

しかし20 年位前から、リスクの高い不具合の発生が多くなったため、FMEA 以外にも設計チェックシートや再発防止シートなどを用いて、不具合が起きるたびに再発防止対策を講じていた。しかし、それでも同じような不具合が発生し、なかなか止まらなくなってきた。

その原因の1 つとして、外部要因の変化点が考えられる。例えば車の事例では、部品共通化など単一部品の生産数が飛躍的に多くなり、いったん問題を起こすと膨大な処置を施さなければならない。また、販売する地域が広くなり、製品が使用される環境も評価基準もない未知の地域などに拡大した。

内部要因には、他社との競争によりなるべく早く市場投入を行うために、製品開発期間の短縮が必要になった。技術者においても、新規採用で増員された設計者は設計経験が浅く、設計者単独では製品開発を進めることが難しいことから、FMEA も浅く形骸化したものになってきた。

FMEA があるのにDRBFM ができた理由を考える

このように、製品開発の外部要因、内部要因が変化し、リスクの高い不具合の発生が多くなり、従来行われていたレベルの表面的で形骸化した「作ることが目的になっていたFMEA」では未然防止の役目を果たせなくなった。

その対策として、FMEA以外にも設計チェックシート、再発防止シートなどを用いて不具合が起きる毎に色々な防止対策を講じたが、設計自体が益々ルールに縛られた作業となり、かつその対応工数が膨大になったため、現在の開発環境に適した効果的な未然防止ツールが新たに必要になってきた。

そこで、使い慣れてきたFMEA の未然防止プロセスを踏襲して、当事者が表面的でなく、各自の現実を見て考えられるように、下記の項目が改善された。

① 製品開発の上流である設計者が具体的に考えることができるように、「お手本の製品から学び、その変更・変化点の差に着目」し、一般解ではなく変更・変化点から起きる特殊解に焦点を集め、心配点の発見を行う。それは「対象部位が絞られ精度向上、工数低減」にも繋がる。

② 「デザインレビュー」は設計審査会のような設計者だけに責任があるのではなく、「開発の責任分担を明確」にしてその責任を果たすため、知見を広く集め「社内総力で問題発見、問題解決」を行う。

以上の状況から未然防止ツール「Design Review Based on Failure Mode(DRBFM)、故障モードに基づくデザインレビュー」が必然的に誕生したと推測する。

設計者にとっては正に「DRBFM とはルールからの解放」であった。なぜかというと、ひたすら膨大なチェックシートの確認、設計審査に明け暮れることなく、各自で自由にやり方を改善し、原理・原則から考えた設計ができるからである。

例えば部品と部品の隙間を確保する場合、チェックシートは5 mm 以上という基準があったとする。自分の設計隙間が4.95 mm だとこの場合はNG になり設計変更を強いられるが、多くの部品に変更が必要になるなど、簡単に直せない場合がある。法規であれば当然NG で、選択の余地はないが、そうでなければチェックシートから外れても問題ない場合が多い。

一般的にはチェックシートに従ったほうが効率的で良いが、設計隙間が4.95 mm で本当に問題となるかを確認する際に、過去のチェックシートができた経緯を調べるチャンスが得られ、自分の設計もそれを適用すべきか考えることができる。設計の選択範囲が広くなり、新たな良品条件・知見が得られる。

(「事例でナットク! DRBFMによる正しい設計プロセスの実行とGD&T(公差設計と幾何公差)で問題解決」p.18-20より一部抜粋改変)

<関連イベントのお知らせ>
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テーマ:DRBFMによる正しい設計プロセスの実行とGD&T(公差設計と幾何公差)で問題解決
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申込方法:詳細についてはこちらでご確認ください https://www.planer.jp/online_seminar.html

<販売サイト>
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<書籍紹介>
不具合をなくすためには事前に漏れなく問題を発見・解決し、設計意図を正しく図面に表現する必要がある。DRBFMとGD&Tを連携させることによりそれが可能となる。本書ではDRBFMの基本を紹介するとともに、DRBFMとGD&Tを連携したやり方を事例とともに解説する。
 
書名:事例でナットク! DRBFMによる正しい設計プロセスの実行とGD&T(公差設計と幾何公差)で問題解決
著者名:鷲﨑 正美、栗山 晃治 著
判型:A5判
総頁数:192頁
税込み価格:2,860円

<執筆者>
鷲﨑 正美(すさき まさみ)
MB コンサル鷲 代表
トヨタ自動車に入社し小型乗用車のボデー開発、設計に従事。その後、ボデー領域の品質監査にて未然防止活動に従事。DRBFM エキスパートA 級を取得しDRBFM エキスパートの審査員とエキスパートの育成を担当。退社後はMB コンサル鷲を運営。DRBFM、なぜなぜ分析企業研修講師。
 
栗山 晃治(くりやま こうじ)
株式会社プラーナー 代表取締役社長
3 次元公差解析ソフトをベースとした大手電機・自動車メーカーへのソフトウェア立ち上げ・サポート支援、GD&T 企業研修講師、公差設計に関する企業事例の米国での講演などにより実績を重ねる。3 次元解析ソフトを使用したGD&T 実践コンサルなど、さらなる新境地を開拓している。著書は「強いものづくりのための公差設計入門講座 今すぐ実践!公差設計」(工学研究)、「3 次元CAD から学ぶ機械設計入門」(森北出版)、「3 次元CAD による手巻きウインチの設計」(パワー社)、「機械設計2015 年5 月号 特集 グローバル時代に対応!事例でわかる公差設計の基礎知識」(日刊工業新聞社)、「設計者は図面で語れ!ケーススタディで理解する 公差設計入門」(日刊工業新聞社)、「設計者は図面で語れ!ケーススタディで理解する幾何公差入門」(日刊工業新聞社)など、多数。

<目次(一部抜粋)>
第1章 DRBFMとは
第2章 DRBFMができた理由を考える
第3章 FMEAとDRBFMの違い
第4章 DRBFMのプロセスと帳票
第5章 DRBFMと公差設計の連携が何故必要か?
第6章 ケーススタディで扱う製品と変更点
第7章 DRBFMとGD&Tの連携ケーススタディ
第8章 プロセス 1)設計情報の分析
第9章 プロセス 2)問題発見の分析
第10章 プロセス 3)問題解決の分析
第11章 問題解決の社内デザインレビューと結果のフォロー
第12章 DRBFMとGD&T連携のまとめ
第13章 DRBFMを精度よく効率的に行うためには

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