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製品作りに必要な射出成形機の3つのポイント

おすすめ本の抜粋「トコトンやさしい射出成形の本」
プラスチック製品の作り方はさまざまで、製品の形状、使用する材料などによって成形法を決めていきます。特に多く活用されているのが射出成形です。
プラスチック成形を入り口として、射出成形について丁寧に解説した書籍『トコトンやさしい射出成形の本』(横田明著)から一部抜粋します。

ある製品を作るために必要な射出成形機の条件を説明しましょう。大きなポイントは3つあります。

①金型を取り付けることが可能で、かつ、成形品を取り出すことができる大きさの機械であること
 金型は型盤と呼ばれる面に取り付けられますが、動かすガイド用タイバーもあります。この中に金型を取り付けられる機械でなければなりません。さらに、金型を開いた後で、取出機などが入る余裕もあり、冷えた成形品が干渉することなく取り出せる必要もあります。

②製品分に足りる溶融樹脂の計量ができること
 これは射出側の条件です。製品を完全に充填できる樹脂量の準備が必要です。溶融時には樹脂は膨らんでいるので、射出容積にも余裕を見込んでおきます。

③製品部に樹脂を射込む時に金型が開かないこと
 射出成形の機械側の圧力は100MPa以上であり、金型内部でも平均圧力は20MPa〜50MPaと高圧です。この圧力で金型が開いて樹脂が漏れ出して、バリが発生すると、製品としては使い物になりません。樹脂圧力が金型を開こうとする力は、平均樹脂圧力と製品の投影面積に比例します。この力以上の型締め力を有した機械が必要となることは、理解できると思います。

必要樹脂圧力は、粘度が高い場合や製品が薄い場合、流れ長さが長い場合などには高いことが要求されます。すなわち、樹脂の種類や製品厚さ、流れ長さ、製品の要求品質などによって平均圧力は異なりますが、すでに、この平均圧力の概略は一般的に知られているので、その値を使って事前に概略必要型締め力を知ることができます。

要点BOX
●金型を取り付けられる大きさの機械
●溶融樹脂の量には余裕を持つ
●樹脂圧力以上の型締め力は必須

(「トコトンやさしい射出成形の本」p.54-55より一部編集し抜粋)

<販売サイト>
Amazon
Rakutenブックス
日刊工業新聞ブックストア

<書籍紹介>
書名:今日からモノ知りシリーズ トコトンやさしい射出成形の本
著者名:横田 明
判型:A5判
総頁数:160頁
税込み価格:1,980円

<執筆者>
横田 明(よこた・あきら)
技術士(化学部門、高分子製品)
特級プラスチック成形技能士
大手機械メーカーにて、射出成形機の設計、新成形技術研究開発(上級主任研究員)を行った後、その技術展開のため関連会社射出成形工場に責任者として出向。成形品質および生産性向上に寄与。多くの射出成形一・二級技能士も育成。
その後、外資系自動車メーカー(担当部門はグローバル部品メーカーとしてスピンオフ)に移り、自動車樹脂部品の開発を担当。射出成形部品の成形問題を事前予測して、新規開発に展開する方法を採用することで開発期間の効率化とコストダウンを達成。欧米含むグローバル全社でシニアテクニカルフェロー5 人のうちの1 人として、アジアをはじめ、欧米、南米などの海外で金型開発、射出成形技術指導を行う。
退職後、現場のわかる技術コンサルタントとして、「技能から技術へ」をモットーに指導中。
6シグマブラックベルトでもある。
ペンネーム、有方広洋(Arikata Koyo)でも出版。

●主な著書
『攻略!「射出成形作業」技能検定試験<1・2 級>学科・実技試験』『200の図とイラストで学ぶ 現場で解決!射出成形の不良対策』『トコトンやさしいプラスチック成形の本』『射出成形加工の不良対策 第2 版』『エクセルを使ったやさしい射出成形解析』『絵とき「射出成形」基礎のきそ』『現場で役立つ射出成形作業の勘どころ』『射出成形加工のツボとコツQ&A』『射出成形大全』(いずれも日刊工業新聞社)など

<目次(一部抜粋)>
第1章 いろいろなプラスチック製品と成形方法
第2章 プラスチックと人工高分子の関係とは?
第3章 射出成形の基礎
第4章 射出成形機を知る
第5章 射出成形機と金型
第6章 射出成形技術と生産改善
第7章 射出成形品の加飾
第8章 射出成形のいろいろ

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