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【ディープテックを追え】車載電池の需要増を捉える、金属接合スタートアップの正体

#107 LINK-US

車載用のリチウムイオン電池の需要が高まっている。電池メーカー各社は電気自動車(EV)シフトを見据え、大規模投資を決めている。韓国のLGエナジーソリューションはホンダと合弁会社を立ち上げ、米国に車載電池の工場を建設する予定だ。

こうした流れを虎視眈々と狙うスタートアップがいる。独自の金属接合技術を用いた装置を製造する、LINK-US(リンクァス、横浜市港北区)だ。EV化の波に乗って、世界中の電池工場への装置導入を目指す。

超音波で金属を接合

同社の装置で接合した金属

リンクァスが持つのは「超音波複合振動接合」という技術だ。超音波接合は圧力と超音波を使い、二つの金属同士を接合する。金属の表面を覆う酸化層が接合界面から除去され、新生面がむき出しになる。こうして原子間結合が起こり、金属同士が接合される仕組みだ。同社の強みは、直線振動とねじり振動を組み合わせた楕円形状の振動を加える点だ。直線振動だけを使う超音波接合よりも振動の折り返しを減らせる。材料へのダメージや熱影響を減らし、材料の強度を高めるなどの効果が得られる。光行潤代表は「折り返しが減ることで作業スピードを高めながら、強度を担保できる」と利点を話す。

車載電池で利用が進む

車載電池を切り口に導入拡大を目指す

利用が進むのが車載用のリチウムイオン電池の製造だ。金属を溶かして接合する溶接は、スパッタが出てしまう。電池の量産工程ではスパッタが電池内部に入り込むことで、発火や発熱の原因になる。同社の技術はこの部分で生きる。超音波複合振動接合はスパッタの発生を抑えられるため、電池の安全性の向上や歩留まりの改善につながる。接合時に合金が発生しないため、接合強度を維持できるなどの利点もある。ラミネート型電池の電極接合に加え、上部と下部の電極を接合する必要のある円筒型電池にも使える。

光行代表

すでに日本の電池メーカーには装置を納入済みで、量産工程にも使用されているという。今後は韓国の大手電池メーカーへの納入を目指す。

韓国のLGエナジーソリューションやSKイノベーションは米国に複数の電池製造拠点を設ける。同社は今後、欧州などにも同様の製造拠点が竣工すると予想する。大手電池メーカーとの取引を通じて、世界中の製造拠点への装置納入を目指す。光行代表によれば「一つの工場で300台程度の装置納入が見込める」という。現在の生産能力は約3.5か月で100台。受注増を見越し、協力工場を増やすなどの取り組みも視野に入れる。同時にベンチャーキャピタル(VC)などからの資金調達も計画する。

将来は炭化ケイ素(SiC)パワー半導体でも応用する。SiCパワー半導体は耐熱性が高く、250から300度Cでも動作する特性がある。一方でそのような高温では、はんだが劣化してしまうためパワー半導体の機能を最大限生かすことができない。同社は自社の技術を応用し、高温でもパワー半導体が動作できるようにしていく。開発のハードルは高いが、車載電池を切り口に応用範囲を広げる。

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