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【ディープテックを追え】量子コンピューターを制御!阪大発スタートアップが商機狙う

#106 キュエル

2030年度には2940億円市場に-。矢野経済研究所(東京都中野区)は30年度の国内の量子コンピューター市場が22年度の187億円から大幅な拡大すると予想する。半導体の微細化の限界を背景に次世代計算機として、米グーグルやIBMなどが熾烈な開発競争を続ける。日本は理化学研究所富士通を中心に開発する。

大阪大学発スタートアップのキュエル(東京都八王子市)は量子コンピューターを制御し、計算結果を読み取る装置を開発する。量子ビットの増加を見据え、事業拡大を目指す。

マイクロ波で量子コンピューターを制御

量子コンピューターは量子が持つ「量子重ね合わせ」という現象を計算に利用する。通常のコンピューターでは、計算前に0か1のビットを規定した上で計算する。量子重ね合わせは0と1のビットが重なり合っている状態で、この性質を応用することで並列計算が可能になる。量子ビットが増えるほどより多くの並列計算をこなせるようになり、複雑な問題を解くことができると期待されている。

同社が開発する制御装置

キュエルが開発する制御装置はマイクロ波で、量子ビットを計算できるように制御したり、量子ビットの状態から計算結果を読み取るのに使う。ユーザーがソフトウエアを通じて入力した問題を量子コンピューターが理解できる形に、量子コンピューターが出した答えをユーザーが理解できる形式で翻訳する。

量子ビット増加に合わせ、事業拡大を目指す

阪大の量子コンピューター

従来、制御装置は量子コンピューターの仕様や用途に合わせるといった個別性が強かった。同社は独立していた機能を一つのユニットまとめ、拡張性が高い装置を開発。新たに開発する量子コンピューターや量子ビットの進化に対応する計画だ。すでに理研へ制御装置の納入が決まっている。

キュエルは量子ビットの増加を背景に事業の拡大を目指す。22年度に4億円程度の売上高を、23年度に10億円程度まで伸ばす。今後は装置の小型化を進め、量子ビット研究を後押しする。

伊藤代表

伊藤陽介代表は「日本からコンピューター領域で有力な企業は少ない」とした上で、「量子コンピューター領域では我々が有力なプレイヤーになっていく」と力を込める。23年からは海外へ事業展開する。研究機関向けの需要を掘り起こす。25年以降は民間企業にも量子コンピューターの事業展開が進展すると予想し、それらの企業に技術提供などの事業拡大を進める。

超電導方式以外にも対応

現在は超電導方式に対応する装置を開発するが、イオントラップや半導体方式など、さまざまな方式の量子コンピューターに適応していく方針だ。また、装置の小型化や省電力化、装置同士の同期性を強める開発を進める。将来は大学と協力して専用ICの開発することも視野に入れる。世界の研究機関から装置の拡販を始め、量子コンピューターの制御装置のスタンダードを目指す。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
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